【天狼院書店初心者講座2020年10月コース受講者向け】③登場人物の掘り下げ方
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【注意】
こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】
講座を受けてくださっている皆様、お疲れ様です。
皆さん、最初の種は見つかりましたか? 見つかっておられない? あっ、まだ急ぐ必要はありません。のんびりやっていきましょう。種さえ見つかれば、結構トントン拍子ということも多いので。
さて、今回は、種を見つけた方向け。
どうやって登場人物を掘り下げていくか、です。
あなたの「最初の種」を見つめよう
小説の「最初の種」が見つかった方、それは、どんな種ですか?
たぶんいくつか、パターンがあるんじゃないかと思います。
・登場人物が何かしているシーン
・「こういう話が書きたいな」という感覚
・特徴的な風景
これは、人や状況によって変わると思うのですが、恐らく最初の種はこのうちのどれかなんじゃないかと思います。そして、これを上手く形にするためには、こういう風に考えていくと良いと講義でお話ししましたね。
「登場人物が何かしているシーン」の場合
そのシーンに登場人物とストーリーの一部がほの見えているので、そこを足がかりに想像を広げる
「こういう話が書きたいな」という感覚の場合
例えば「相棒」みたいな話が書きたいな、だった場合、「相棒」のような世界が成立するようなストーリーや登場人物を想像してゆく
特徴的な風景の場合
その風景の中で成立しそうなストーリーや登場人物を考えてゆく
「最初の種」を見つめること。これが、最初の前提です。
その上で。
登場人物を掘り下げるために
皆さんは、「登場人物の書き分け」という言葉を聞いたことはありませんか? あるいは最近だと「キャラ立ち」という言葉もありますね。
登場人物を作る際、皆さんに一番考えていただきたいのは、「書き分け」「キャラ立ち」なのです。
この世には、同じ人は誰一人としていません。
それはなぜか。
質問を変えましょう。
人と人とを分かつものは何か。
それは、物事の選択パターンと志向、つまり思考です。
どういうことか。
人はいつも何かを選択して生きています。今日のお昼ご飯、何にしようかな。ねっ、人は大なり小なり選択をし続けています。その選択のパターンこそが個性と呼ばれるものの正体の一端です。
そして、もう一つ大事なのが、その人物が何を志向するか、です。
たとえば皆さんにも経験がおありかも知れません。大好きなラーメンが食べたい、のだけど、現在ダイエット中で結局お昼ご飯を諦めた、みたいなこと、ありますよね。これは、本人の選択パターンとは別に、志向が存在し、その人の行動を規定しているのです。
登場人物の「志向=目的」を掘り下げよう
物事の選択パターンについては、この段階で深めるのは(あまりに細かすぎて)難しいんじゃないかと思います。わたしもその辺りについては実際に小説を書き始めてからアドリブ的にやっています。
この段階で皆さんに深めておいてほしいのは、登場人物の「志向」なのです。
「志向」が難しいなら、「目的」と言い換えても良いでしょう。
小説に出てくる登場人物には、何らかの目的があります。
(これは漫画ですが)ドラえもんを例に出しましょう。
ドラえもんはのび太君を正しい方向に導くという目的があります。
のび太君は(お話にもよりますが)何かままならないことがあって、その状態を解決したいという目的を持って行動します。
物語における登場人物は、何らかの目的を持っているのです。それを意識してやると、人物の配置が定まってきます。
例えば、主人公と対立する敵役は、主人公の目的を成就する際に邪魔者になるか、競合関係にあります。競合関係にある場合、敵役は主人公と全く同じ目的を有していることになりますね。
主人公に協力をする脇役は、主人公の目的を成就させることに何らかのメリットや目的があるはずです。
と、主人公の「目的」を決めてやると、大まかな人物配置の完成です。
この作業についてまとめるなら、
主人公の「目的」を決める
↓
主人公と敵対する敵役の「目的」を決める
↓
主人公や敵役の周囲人物の「目的」を決める
こんな感じになります。
人物配置が決まったら、肉付けしよう
人物の配置が終わったら、次に肉付けです。
実はこれには、初心者の方におすすめしている方法があります。
一つは、既存の作品の登場人物をイメージしながら肉付けしてやること。
特に悪役・敵役に有効ですが、魅力的な悪役・敵役は小説を始め、漫画や映画、演劇作品に溢れかえっています。これらをイメージすればいいのです。
パクリ?
あー、パクリという言葉、わたしはあんまり好きじゃありません。というのも、パクリは合法的な引用や換骨奪胎と非合法である剽窃を一緒くたにする、大変雑な言葉だからです。
剽窃というのは、台詞をまるまるコピーアンドペーストしたり、明らかに他作品の登場人物をそのまま出してしまったりすることです(後者は場合はパロディと認められる行為ですが……)。既存の登場人物のイメージを抽出して自分なりに解釈し直して自身の登場人物の肉付けに使うのは、決して悪いことではありません。
もしこの方法に抵抗がおありなら、こうした方法もあります。
実在の人物をモデルにすることです。
歴史上の人物や、皆さんの周りにいる人々、あるいは芸能人などの有名人をモデルにすることです。
「顔が思い浮かぶこと」って、案外大事です。顔が思い浮かぶことで、その人が言いそうなこと、とか、考えそうなことが見えてくることがあります。そして、その人の話しぶりや癖などを登場人物に仮託することができるので、イメージを膨らませやすくなるんじゃないかと思います。
構想、企画段階での作業は、「出来る限り具体的に想像すること」が肝になります。
そのため、登場人物を想像するときは、実在の人物を使ってでも、ディディールを彫り込んでいく必要があるというわけです。
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