「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ⑬蒲生氏郷&酒巻靱負
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はい、今回は「某には策があり申す」に出てくる蒲生氏郷、そして酒巻靱負のライナーノーツです。
蒲生氏郷 酒巻靱負
曽(×) 某(〇) 孫(×)
どちらも「某には策があり申す」にしか登場しませんが、どちらも本作でかなり重要な役割を演じています。
蒲生氏郷さんが本作に登場したのは、島左近が一時身を寄せていたという説があることや、のちに石田家に帰参する蒲生喜内のもとの家中であることなどといった事情があり、物語の要請を受けて登場させました。史実はどうかというと、実際はちょっと怪しいのではないかと思います(笑)。わたしが書いているのはあくまで小説なので、物語の要請に合わせ、無理筋だよなあと思う説でも用いる場合があります。本作でも大嘘はいくらでもついていますが、その中の一つが蒲生氏郷さん廻りの話であったりします。
というわけなので、氏郷さんには重要な役割を与えました。それは、関ケ原の合戦で露呈する島左近の人間性に関わる指摘です。秀長でも三成でもなく、氏郷さんにこのセリフを言わせてよかったなあと思っている次第です。
お次は酒巻靱負。
和田竜先生「のぼうの城」で有名になった人で、正直それまでは知る人ぞ知る地域の武将にすぎませんでした。事実わたしも「のぼうの城」で存在を知りました。
正直、後半生はよくわかっていません。恐らくは忍城での攻防戦ののちは地域に根付き、そこで平穏に生きていった人なのでしょう。実際、もし北条攻めなどなかったら、きっとこの人は地侍の一人として比較的平穏無事に生きた人だったでしょう。
というわたしの感想があり、わたしは彼に天下の対極にある登場人物として描き出しました。このお話、関ヶ原の合戦がメインなことからもお分かりの通り、実はかなり天下国家の話ばっかりで、それを相対化する視点がなかったんです。酒巻を導入してやったことで初めて天下の戦を斜に見たり、天下人には見えない戦の形を物語る視点を創出できたと思っています。
本作の最後、島左近の前に登場するのが酒巻なのも偶然ではありません。酒巻に背負わせた「大衆」の視線に断される島左近、という図がどうしても欲しかったのです。
おかげで、島左近という人物の陰影をより深くえぐることができたんではないかと思います。
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