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1/26発売『小説 西海屋騒動』(二見書房)はこんな話⑬理吉の父と母、志村屋太平と美津

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 拙作における主人公、理吉の父と母に当たる志村屋太平と美津についてなのですが……。いえね、もちろん原典には登場しますし、太平については台詞もたくさんあるんですけどね……。実は、二人ともあまり扱いが大きくない印象があります。
 それもそのはず、この二人は九紋龍の新吉と黒旋風の理吉の親、あるいは青春時代を用意した二人、という印象しかありません。原典でもその扱いは粗略なものでした(とはいえ、理吉の運命を最初に変える人間なので、殊に太平は責任が重いのですが)。

 それにしても、原典を浚っても、太平と美津は不思議な夫婦です。美津に至ってはほとんど台詞がなく、人物像を知ることはできませんでした。太平については理吉を巡るあれこれや、新吉への態度(彫り物をしてきても結局許すという逸話など)、侠客を愛するその人となりなど、結構な味付けがなされているのですが……。
 西海屋騒動の時代である幕末は、幕藩体制がほぼ崩壊に差し掛かっており、街道筋の安全は確保されてはいませんでした。そのため、天保期には国定忠治が出て上州の街道筋を支配したりするわけです。平たく言えば、当時、幕府や各藩の警察力はかなり低かったといえます。そのため、町の人々は自分の身を守るため、自衛を始めたり、侠客に身辺を守って貰ったりして身を守っていたのです。原典にある「侠客を愛する」というのは、きっとそういうことなのだろうな、と解釈して、本作では消極的に侠客を用いる脇本陣の主人、という風にしました。

 そして、この夫妻の人物像についてですが……。ほとんどはわたしが肉付けしました。想像の余地が沢山残されているだけに、この二人を描き出すのは結構楽しい作業でした。なにせ、拙作において、理吉が転落していく最初の道を作り出したのは、この夫婦なのですから……。

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