一生懸命やることの「効能」
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わたしは現在浮き草稼業街道をまっしぐらに走っています。売り上げと人気と実力がすべてという、ありていに言って飢えた肉食動物が跋扈するサバンナみたいなところですが、意外に居心地はいいです。
六年目にしてようやくなんとなく居場所を見つけたかなーという感じでおります不肖谷津でございますが、「一生懸命にやる」ことを自分の目標にしています。
いえね、ぶっちゃけ、一生懸命に描いたことで本が売れたり、評価されたりするわけじゃないんですよ。もちろん、頑張ったことによりいい作品になって書評が掲載されたり文学賞にノミネートしたり……ということもあるかとは思いますが、実際いい作品を描いても実売に結びつかなかったり、評価されずに埋もれるということもある、というのが六年間小説の世界で小説を書き、見聞きしてきた商業出版の世界です。
でも、一つ言えるのは、「一生懸命」に取り組めなかった仕事には後悔が残ります。
「あの時こうしておきゃよかった」
「もっと粘っていれば評価されたのかもしれないのに」
「もっと死ぬ気で改稿していれば、本も売れたんじゃないか」
そんな心の声に圧し潰され、泣きたくなる日もあります。
だから、わたしは「売れるため」でも「評価されるため」でもなく、ただただ己の精神衛生のために、一生懸命書くと決めています。
そういう風に決めてから、わたしは商業小説というサバンナのことが大好きになりました。
歩みを止めていると四方八方から肉食獣の視線にさらされて疲弊するばっかりですが、全力疾走していれば、周りの風景なんてわかりません。
走るだけの場はいくらでもあります。あとは、そこで後悔なく走り回ろうとわたしは考えています。
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