桔梗の旗書影

12/5刊行『桔梗の旗』(潮出版社)はこんな話⑥「実は本能寺ものです」

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 さて、発売予定日が三日後に迫っている(のだけど実は既に先行で販売をさせていただいた)『桔梗の旗』に関してです。
 ここまでの『こんな話』をご覧になってくださった皆様には自明のことかもしれませんが、本書は何と本能寺ものです。
 いや、というか、明智光秀を材に取っているのに本能寺の変を書かないのはちょっとまずいんですよ。
 史実ベースのお話だと、やはり明智光秀は最後の十年余りの活躍が広く知られています。彼の前半生についてはいろいろな場面において諸説ある状態で、信頼なる資料は少なく、まだまだ未解明の部分が多いと言わざるを得ません。以前にも書いた気がしますが、明智家はこの後表向きは家として滅んでしまい家譜の類が作られなかったという経緯も光秀の前半生の不透明さを助長しているんじゃないかと思うのですが……。いずれにしても、明智光秀という人は、織田信長の家臣として頭角を現し、謀叛を起こしたことで広く日本史に名を遺した人物と言えるのです。

 明智光秀を書いてください、と依頼があった際、どうしたらよい作品になるだろうかと考えたわけです。もちろん、光秀の前半生を描く選択肢もありました。歴史小説において光秀の前半生を色濃く描いた小説は意外に多くありません。定番から「外す」意味においても、前半生を描いてもよかったのですがとっかかりが少なすぎたので諦めた経緯があるのです。だったらむしろ燃え盛る本能寺に向かって突貫! の道を選んだ次第です。

 そして……、実は本作、時系列の関係上、本能寺の変がテキスト上に二回現れます。
 ややネタバレですが、実は本作、明智光慶(十五郎)と明智秀満(左馬助)それぞれの視点で天正八年~十年の様子を描いているため、光慶と秀満それぞれの本能寺の変が描かれています。実は光慶は直接本能寺の変やその後のごたごたに関わっているわけではないので伝聞的に戦の様子を漏れ聞くばかりですが、秀満に関しては真正面から紅蓮の本能寺に挑んでおります。実は、秀満、しっかり本能寺の変で大立ち回りを演じておりますし、織田信長とも邂逅しています。本作でもかなりエモい見せ場かと思いますので、ぜひともお楽しみに。

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