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『新歴史・時代小説家になろう』第1回「おおまかな取り決め&歴史小説と時代小説の違い」

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 我ながら、馬鹿なことを呟いちまったぜ……。
 いえね、昨日、こんな呟きをしちゃったんですよ。

 そしたら意外に需要があるよとお声をいただきまして。
 マジかよ。お前ら、そんなに歴史・時代小説、書きたいのかよ!
 でもまあ、これだけお声をいただいたし、昔の原稿を思い出しながら(小説家になろうに投稿していた原稿はデータを紛失してました)書けばそこまで負担じゃないかー、ということで、かつての原稿の内容を思い出しつつ、今のわたしの知見を交えつつ、歴史小説、時代小説の書き方についてちろちろ書いていこうと思います。
 わたしがこう思い立ったのは、他の事情もあります。

 何を隠そう谷津は天狼院書店さんで初心者の方を対象にした小説執筆講座の講師を受け持っているのですが、「歴史小説、時代小説ってどう書いたらいいんですか?」とご質問を頂くことも多いのです。個別のご質問にはお答えさせていただいているのですが、体系的に歴史・時代小説に特化した指導は一切しておりません。というのも、講座があくまで初心者の方向けで、現代小説の応用編に当たる歴史・時代小説は趣旨から外れてしまうからなんです。
 というわけで、この連載、天狼院書店さんの講座での補講みたいな位置づけにもなるんじゃないかと思います。

 あっ、そういえば、10月から二か月コースの講座がスタートするので、もしよろしければ。ちなみに、谷津の一身上の都合で完全リモート講義となる点、まことに申し訳ございませんが、裏を返すと日本、それどころかインターネット環境さえあれば世界中で受講可能ですのでぜひぜひ。

 それはさておき。今回は第一回ということで、連載のルールと、歴史小説・時代小説の違いについて話していきます。

連載のルール

 連載スピードですが、すみません、こちら、不定期です。いろいろ原稿を抱えている身の上なのでお許しください!
 また、わたしが想定している本連載の読者さんは、

 小説は書いたことがあるけど、歴史・時代小説を書いたことがない人
 これから歴史・時代小説を書いてみたい人

 となっています。具体的には、「小説家になろう」をはじめとしたWEB小説家の皆さんや、同人誌などでご活躍の方、趣味で小説を書いておられる初心者の方向けです。
 一般的な小説技法についてはご理解いただいているという前提でお話します。一作も小説を書いたことがない、という方は、一度短編でもいいので現代小説を書いてからこちらにお越しください。
 あ、そうそう。今、これを読んでいるプロ作家に、これだけはくれぐれも言っておく。お前らに教えることは何にもねえ(このエッセイには特に得るものないからブラウザバックしてください)!
 申し訳ないのですが、ご質問はご勘弁ください。
 あともう一つ大事なこと。
 この一連の記事に投げ銭をしないでください。
 もしも投げ銭をなさりたい方は、わたしの本を買っていただければ幸いです。
 
できれば、九月刊行の『絵ことば又兵衛』とか、十月刊行の『おもちゃ絵芳藤』とかを予約していただけると、著者は小躍りします。

 というわけで、ルール説明が終わったところで、今回最初の講座です。

歴史小説と時代小説ってどう違うの?

 はい、皆さん、案外ご存じないんじゃないでしょうか。
 世間の皆さんとお話していると、二者を混同して用いておられる方が多いようにお見受けします。これは決して一般の人たちばかりではなく、歴史・時代小説をお書きになっておられないプロ作家さんでも時折混同が見られるくらいなので、違いを御存じないとしても何の不思議もありません。
 歴史小説と時代小説は、こうした違いがあります。

歴史小説
 ある歴史上の人物、事件をメインモチーフにし、歴史的事実に沿ったストーリーを有した小説

時代小説
 時代設定が過去に置かれており、歴史的事実がストーリーに深く関わっていない小説

 この説明をする時に非常に分かりやすいのが、「水戸黄門」です。
 水戸黄門は実在の人物(徳川光圀)を主人公にしていますが、もし本作が時代劇でなく小説だったなら「時代小説」の扱いになります。
 えっ、実在の人物が主人公なら歴史小説なんじゃないの? とお思いの方もいらっしゃると思いますが、上の定義をもう一度読んでみましょう。歴史小説の定義のところに、こう書いてありますね。歴史的事実に沿ったストーリーを有した小説が歴史小説であると。
 「水戸黄門」は確かに実在の人物が主人公です。しかしながら、そのストーリーは史実の徳川光圀から大きく乖離した(諸国を漫遊して悪代官を成敗する)内容です。従って、「水戸黄門」が小説だったなら、歴史小説ではなく、時代小説と考えるのが適当です。
 つまり、歴史小説と時代小説の違いは、「歴史的な経緯をメインストーリーに組み込んでいるか否か」なのです。

 もし皆さんが「江戸時代を舞台にしたミステリが書きたい」とお思いなら、それは時代小説です。逆に、「徳川家康を主人公に、その生涯を書きたい」とお思いならば歴史小説となるのです。

コラム
 ここのところ、この区分もかなり怪しくなってきている気がひしひしとしています。
 「徳川家康を探偵役にしたミステリで、事件を解決すると史実のある事件とリンクしている」というような筋立ての小説が数多く刊行されるようになりました(拙作にも結構ある)。
 こうした小説の場合、メインストーリーであるミステリ部分はフィクションなので時代小説のようにも見えますが、それが徳川家康の年譜とリンクしている以上、歴史小説としても読めるわけですね。
 ここのところ、歴史・時代小説分野も越境化が進んでおり、二者をわざと混淆させることで新たな読み味を確立せんとした作品も結構あります。なので、上記の定義は「暫定」のものとお考えいただけると嬉しいです。

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