奇説無惨絵条々書影

【天狼院書店初心者短編2019年12月コース受講者向け】①小説は変化を描くものである

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 さて、第四回の天狼院100枚小説講座(すまん、わたしも正式名称がよくわかってないんです)をご受講の皆様、大変お疲れさまでした。そして、昨日のわたし、やや風邪をひいており、ご説明などの点で聞き取りづらいところがあったかもしれません。お詫び申し上げる次第です。

 さて、実は昨日、皆さんに一番大事なことを教え損ねている気がして、悶々としておりました。そんなわけで、今回は昨日の補講です。

 小説は何を書くものなのか。
 たぶん、初めて物語をお作りになる方の最初の壁だと思います。
 えっ?「人間の心情を描くもの」? うーん、間違いではないんですが、実はあんまりそれが前面に出過ぎるとまずいんですよねえ。なので、わたしは講座の際にはこうお伝えするようにしています。

 小説は、「何らかの変化」を描くものである

 と。
 

 主人公
 ○○という事件(出来事)を経て
 ××に変化を遂げる

 というのが物語の一番大きな祖型だと昨日の講座でご説明しました。ところが、実は物語は、こうした祖型を持っているものも存在します。

 ある事件(出来事)が
 主人公の介入によって
 ××に変化を遂げる

 上と下で同じことを言っていないか、と思った方はよく見比べてください。上の祖型において変化するのは主人公です。それに対し、下の祖型において変化するのは出来事なのです。
 あるいは、こんな祖型も考えられます。

 作中世界の世界観が、
 主人公の介入によって
 ××に変化を遂げる

 この場合、変化を遂げるのは世界観ですね。
 すなわち、究極的には、主人公、出来事、世界観のいずれか(あるいは二つ以上)の変化を描くのが小説なのだといえそうです。
 主人公が変化しない小説なんてありえるの? という質問がやってきそうですが、ありえます。もちろん最近では主人公の変化を練り込んだ作品も多いですが、続き物のミステリ作品においては、劇中で語られた事件の解決(事件の未解決状態からの変化)が語られ、主人公は初期状態から変化しないということも十分にあり得ます。

 つまるところ、小説を作る際にまず考えなくてはならないのは、「あなたが何を変えたいのか」なのです。
 あなたが変えたいのは主人公ですか? それとも出来事ですか? それとも世界観ですか? あるいは、このうち二つですか? それとも、三つともすべて?
 こういい替えてもいいでしょう。あなたが今書こうとしている小説は、最後に何が変わりますか? 何を変える過程を描くおつもりですか?

 出来事を変化させる小説が「短篇小説」、主人公世界観を変化させる小説が「長篇小説」(ここでいう「短篇」「長篇」はその長さの区分に非ず。講座を聞いてくださった方はレジメを読み返してください)なのではないかというのがわたしのざっくりとした考えですが、いずれにしても。

 小説を書こうとしているあなたは、いったいどんな変化を書こうとお考えか。

 まずそこを足掛かりに、漠としたイメージの霧の中を歩いてみてください。しばらく歩くうちに、きっとあなたなりのお答えが見つかるはずです。

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