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【天狼院書店初心者短編2019年12月コース受講者向け】⑥誰に向かって書くべきか?

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 さて、天狼院書店さんの初心者向け小説講座受講者の皆様、進捗は如何でしょうか。
 あまりうまくいっていない? いや、それはそれでいいんです。こう言っちゃなんですが、まだ1/12、これから毎日十枚書けば、なんとびっくり、1/22で目標達成です。小説の原稿を百枚書くという企画、実は難しいようでいて、やってみると案外簡単なものです。なので、まだまだうまく書き出しがうまくいっていない人も自分の物語にとことん向き合っていただければと思います。

 さて、本日のTIPSは、小説を書くとき「誰に」書くようにするといいか、という話です。

 小説は(というか世の中にあるすべてのテキストは)書き手と受け手が想定されています。例えば今わたしが書いているこのnoteは、天狼院書店さんの小説初心者講座の受講者さん向けに書いています。皆さんに必ず持ち帰っていただきたいことの一つに、テキストには必ず書き手と受け手が存在することがあります。
 受け手の存在。実はこれは、小説を書いていく際、その中身にも影響を与える重大な存在です。受け手にとってあまりにレベルの高すぎるものは描いたところで理解されませんし、かといってレベルの低いものを出すとそれはそれで文句が出る。なので、受け手をしっかり捉えた上で、その鼻先を掠めていくような作品を書く必要があるわけです。
 プロの小説家になると、自分の本を買い支えてくださるお客様の主な年齢層や性別などを睨み、それに合わせた書き方や興味に合わせて作品を作り上げてゆくことになります。これがいわゆるマーケティングを活用した創作ということになるのですが、これはあくまで上級者向けテクニックです。それこそ、プロの小説家として世に出てから、必要に応じて覚えればよい事柄です。
 その上で――。

 初心者の皆様は、上記の堅苦しい話はとりあえず忘れてください。
 誰かに向けてではなく、「自分」に向けて書いてください。

 どういうことか。

 そもそも「誰かのために書く」のはすごく難しいことです。その「誰か」の文章理解力や読解力、語彙力などを捉え、さらに拒絶されないくらいには近しいものを書かなくてはいけないわけですが、そんなことをこれから始めて小説を書くというあなたに求めるのはあまりに酷です。
 また、よく、「自分の身近な人に向けて書く」ということも言われるのですが、これはこれで難点があります。例えばですが、自分の子供に向けて書こうと思った小説に、ベッドシーンを描き入れること、心理的に可能ですか? ということです。もちろん、ある小説では年上の友人に、ある小説では……とスイッチできるのならお子さんに向かって小説を書くのも悪いことではないですが、「受け手」を強く想定することは、ある意味であなたの創作を狭くすることになるのです。

 だからこそ、「自分に向けて書い」ていただきたいのです。

 自分はこんな小説を読んでみたい!
 こんな小説を書いてみたい!

 その初期衝動に命じられるがまま、第一作を書いてみていただきたいのです。
 その上で、「誰かに向けて書く」ことをお覚えになってもよろしいのではないでしょうか。

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