奇説無惨絵条々書影

【天狼院書店初心者短編2019年12月コース受講者向け】⑦自分の好きを詰め込もう

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 はい、天狼院初心者講座を受けてくださっているみなさま、進捗は如何でしょうか。
 ちなみに、谷津は駄目です(汗)
 いや、言い訳をするとこの時期は確定申告の準備に追われ……って、まだやってねえや(笑)いったいわたしはこの一月、何に時間を溶かしているというのだ。

 それはさておき、今週の小説TIPSです。

 小説はときたま「料理」に譬えられます。
 材料を集め、下ごしらえをし、材料を組み合わせて一つの料理をつくる。この行動はまさしく、様々な資料やネタを集め、それらをプロットなどに仕立てて用意をし、実際に小説として立ち上げることで混ぜ合わせ完成品とする小説執筆のプロセスとよく似ていると思います。実際、毎日家で料理しながら小説も書いているわたしが言うんだから間違いありません。
 今回小説を始めて書く皆さんは、言うなればお料理教室にやってきた方々です。そしてわたしは皆さんにお料理の基礎をお伝えするインストラクターという立場でして、わたしが講座でご説明していることの多くは包丁やまな板の使い方であったり、おおさじとこさじの違いであったり、少々、一つまみの微妙な差異をお伝えしたりといった基礎的なお話なわけです。実際、世間の小説講座を見回すと、お料理教室というよりはシェフを目指す専門学校みたいなノリでして、わたしの講座はちょっと特殊ともいえますね。
 閑話休題。
 つまるところわたしが何を言いたいのかと言うと、わたしは今、皆さんには「料理の手順」をお教えしているのであって、「めちゃくちゃ美味しい料理の作り方」をお教えしているわけではないということをご了解いただきたかったのです。この講座で皆さんに作ってほしいのは、「自分のための一皿」なのです。
 今日はそうした見地に立った上での話です。

 自分のための小説を書くにあたり、想定される読者は自分自身です。実は小説を書いているときの楽しさというのは、読者である自分自身の満足とも深く関わっています。
 うまくなってくると何を書いても楽しくなってくるのですが、初心者の皆様の場合はちょっと工夫が必要です。
 具体的なアドバイスとしては、自分の好きなものとか強く興味を持っているものを書き入れるとよいのです。
 たとえばあなたが宝石がお好きなら、登場人物の描写に取り入れてみてはいかがでしょう? マラソンがお好きなら、プロットを多少いじってでもマラソンのシーンを取り入れてみてはいかがでしょう。車がお好きなら(略)、ガンプラがお好きなら(略)、歴史がお好きなら(略)。
 いうなればこれは初めて作る料理の具に自分の大好物を入れるような行ないです。ね、ワクワクするでしょう?

 小説を書こうとすると、人はつい「人生とは……」「我々の文明とは……」「持続可能な社会とは……」と高尚な想いに囚われるようです。もちろんそうしたものがお好きならそれはそれでよいのですが、「小説を書く」ということに引きずられ、自分に興味のない問いかけをするよりは、自分にとって好きであったり興味を引かれていたりといった、自分にとって切実なモチーフや事物を用いて作った方が、自分にとって意味のある創作になっていくんじゃないかと思います。

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