_三人孫市_書影_おびなし_

資料集めと生命線

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 ここのところ、資料運のいい谷津でございます。

 よく世間の皆様からは「作家っていいよねえ。何もないところからものを生み出すことができるんだから」と言われる(特に製造業の方)ことがあるのですが、いやいや、案外小説家もいろんなものを仕入れて小説を作っています。原材料がどれも情報だからそう見えるだけで、実際には仕入れをしまくり、その中から使える原材料を見つけ出し、それを培養していって小説に仕立て上げるのです。
 というわけで、わたしはわたしで(もちろん好きだからというのはあるにせよ)毎日のように本を読んでいるのですが、なかなかよい原材料が見つからないときや、うまくピタリとはまらないときがあります。そういうときはわたしの心の側に問題があるのか、そういう巡り合わせなのかはわかりません。いずれにしても、うーむ、どうもいいネタに出会えない、となってしまいます。
 ところが、ここのところやけに当たりを引いている感じがあります。
「へー、こんなことがあったのか」
 と思わず声を上げちゃうようなことを知ったり、
「こんなの知らなかった」
 みたいな知識にも出会っています。
 
 今月何かあったっけ? と首をかしげているのですが、思いつくことはただ一つ。
 今月は第一稿の執筆をしたんですね。
 恐らく、頭を小説のことで満たすと面白いネタに出会えるよう。
 つまり、これからわたしは第一稿作業中に他の小説のネタを探すということになりそうで……。いやあ、忙しすぎるだろそれ……。
 いえね、第一稿の作業って、案外気を張るんですよ。「後から直せばいいじゃん」みたいなご意見もおありでしょうが、背骨が曲がっていると直しようがなく、リセットするしかなくなる場合すらあるんです。実際、七月の第一稿は前回失敗した小説のリトライでした。

 と愚痴っても仕方なく。
 実際、資料運は作家の生命線です。いい資料に出会っているか否かで、実際小説の出来に違いが出てきます。いや、その資料内容を反映したからよくなるわけではなく、ともするとふわふわ漂ってしまう小説を押し留め、地に足をつけさせる役割をしてくれる気がしています。変な話ですが「資料があると知っている」だけで、小説が締まるのです。
 というわけで、万難を排し、これからも資料集めに邁進する次第。

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