桔梗の旗書影

12/5刊行『桔梗の旗』(潮出版社)はこんな話③「主人公のお父さんは明智光秀です」

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 『桔梗の旗』について、ご説明しなくてはなりますまい。本作には、来年の大河ドラマ『麒麟がくる』の主役である明智光秀が登場します!(どどーん)

 って、そりゃそうですよねえ。明智光慶を主人公にするのに、その父親である光秀を出さないわけがありません。
 とはいえ、実は明智光秀の登板は、わたしのキャリアにおいて重大な意味があります。

 世間一般において、わたしは「絵師(芸道)小説の谷津」という評判があります。実際、デビュー作からして絵師・狩野永徳の話ですし、二作目は江戸後期の絵師たちを支えた版元である蔦屋重三郎が主人公でした。実際、わたしの出世作の多くは絵師や絵師の周辺を描いた小説ばかりということになっています。
 ところが実は、わたしは「父と子」のモチーフを好んで描く作家でもあります。
 例えばデビュー作の『洛中洛外画狂伝 狩野永徳』からして狩野永徳とその父松栄との親子間対立を描きましたし、近作だと『しょったれ半蔵』では父親の敷いたレールを嫌う主人公がそこからの脱却を図るという父と子を描きました。ほかにも何作か「父と子」モチーフ作はあります(最新刊の『廉太郎ノオト』にさえちょろっと出てきます)。
 そんなわけで、『桔梗の旗』もまた、谷津による「父と子」物語の一つと位置付けることができるのではないかと思います。
 なんというか、父子間のディスコミュニケーションを描くのが結構好きらしい……ということに最近気づきかけております次第です。

 ちなみに今回描いた明智光秀は普通の人設定です。
 明智光秀、今はいろんな書き方が許容されてきて、それこそ信長以上の悪逆非道ぶりを描いた作品さえありますが、わたしは(もちろん武士なので時と場合においては無道なまでに戦う残酷さを有しながら)人情に篤い、悩める普通の人として描いています。もちろん、光秀の新しさ、誤算、そして彼が見逃してしまったものについてもいろいろと書き込んでおりますのでお楽しみに。

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