刀と算盤

「曽呂利」をなぜ直したのか

 新刊「刀と算盤」(光文社)好評発売中です!

 さて、来年二月刊行予定の「曽呂利(文庫版)」(実業之日本社)のゲラを先日から書店員さん向けにお送りいただいておりますようで、早くもご感想を上げてくださった方もいらっしゃいます。実にありがたい限りです。

 今回の「曽呂利(文庫版)」、単行本より四割書き直した(全九章のうち四章分を差し替えた)というのが大きなウリになっています。
 ほんとうは直さない方がいいに決まっている(文庫を買う方が良い作品になってしまっているということは、単行本を買わずに待っていた方がいい作品を廉価に買えるというインセンティブを読者さん側に生みかねない)のですが、それでも直したのにはいろいろと理由があります。

 今となっては言い訳になってしまいますが、「曽呂利(単行本版)」の執筆時の記憶はほとんどありません。というのも、サラリーマンをやりながらの二足の草鞋を履いていたゆえ、いっぱいいっぱいにもほどがあったのです(「曽呂利」の刊行年は、兼業作家なのに年に書き下ろし本が五冊出るという異常事態でした)。
 当時の担当者さんも色々と疑問を呈してくださいましたし、あの頃のわたしも死ぬ気で頑張っていたはずですが、やはり余裕のない時にやる仕事というのはどうしても薄味になってしまうもの、後になって「あそこ、こうしておけばよかった……!」とへこむ日々でした(実は「曽呂利」に関しては、本当にこの手の後悔が多い小説だったのです)。

 それに、実は「曽呂利」というテクストは歴史小説でありながら、ミステリ小説的なエッセンスを有しているのですが、当時のわたしはミステリとは何ぞやという部分に対する理解が弱かったように思います。

 とにかく、2018年のわたしにとっては、きわめて不本意な仕事であったわけです。なので、現担当者さんに泣きつき、「もう一度原稿レベルでやり直させてください!」と頼み込み、結局全九章のうち四章差し替え、残り五章に関しても手を入れるという魔改造をさせていただいたというわけなのです。

 すべては2019年2月に本書を手に取ってくださるすべての読者様のため。
 あと、ほんのちょっとわたしの沽券のため。

 そうして、文庫版「曽呂利」は改稿されたのであります。

 なお、「曽呂利」のゲラを読んでみたいという書店員様いらっしゃいましたら、実業之日本社様にお気軽にお問い合わせください。営業の加藤さんにお話しくださるとスムーズなようです!

 よろしくお願いいたします!

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