1/26発売『小説 西海屋騒動』(二見書房)はこんな話⑥主人公にした理吉という男
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さて、一応明日辺り発売ですが、早くも店頭に並べてくださる書店さんも出てきている『小説 西海屋騒動』(二見書房)です。皆様、お見つけ次第ゲットしてくださいね。
喜久屋書店仙台店さま、ありがとうございます!
さて、ここでそろそろ、『小説 西海屋騒動』の主人公である理吉の話をしようと思います。
ここから先、ちょっとネタバレがふくまれているので、もし中身を知らずに読みたいという人は今回の更新はスルーしてください。
本文を読みたい方は、下にスクロールしてください。
原典の『西海屋騒動』、あるいは『唐土模様倭粋子』はあくまで群像劇で、主役、というか、焦点を定めづらい面があります。しいてお話の中心人物を挙げるなら、
花和尚 魯心
西海屋 慶蔵
九紋龍の新吉
理吉
あたりとなりましょう。善玉に焦点をあげるなら魯心、新吉。悪玉ならば慶蔵か理吉ですかね。
原典は前日譚も含むなら三十年以上のタイムスパンのあるお話で、あっちこっちで起こった出来事が最終的に一つの線に繋がって解決に向かう物語なので、中心なんてあってなきがごときものです。
『西海屋騒動』と名はついていますが、西海屋の慶蔵を追っても全体像は見えないんですよ。慶蔵の目から見た場合、西海屋での出来事は仇討ちとなるにはなるのでまとまりはいいんですが、一方で使わない大駒の多すぎる、ちょっと間抜けたお話になっちゃう恐れがあったんですね。
この四人の中で、最もお話に出続け、焦点とするのに丁度よかったのが理吉だったのです。
理吉は軽井沢の脇本陣の次男坊として生まれるものの、実は脇本陣の子ではなく、嵐山花五郎という侠客に殺された武士、郡寒蔵の子でした。幼い頃から悪の道に進み、義理の親の手に負えぬ悪党に育ってしまい、厄介払いのように高崎に奉公に出されるものの、その奉公先の主人とおかみが、かつて己の実母を斬り殺した人間と知り、主人を殺し、その主人の娘であるお柳を連れて江戸に行こうとして失敗、お柳は拐かされちりぢりになります。そして、花和尚魯心に拾われて暫く過ごした後、江戸の西海屋に奉公に上がり、西海屋の御家騒動に巻き込まれてゆくのですが――。
原典をどんなに読んでも、理吉の行動がわけわかんないんですよ。
途中でばすばす意味もなく人を殺していたり、10歳にもならないうちに博打にのめり込んでいたりと。この感じ、ある種のシリアルキラーの年譜を眺めている感じで、わけがわからないのですけど辺にリアリティがあるんですよ。いや、本当に刹那的に生きている感じが凄い。
わたしが原典を拝読した感じでは、本作の登場人物たちは「刹那的」の一言に尽きます。明日があることをまったく信じていませんし、明日のことなんか全然考えてないんですよ。その上で、「まあ、困ったことがあったらさくっと殺っちまえばいいか」みたいな開き直りすら感じます。
でも、小説の主人公にするに当たってそれではまとまらないので、理吉にある種の「飢え」を与え、その「飢え」に突き動かされて悪事に手を染めていく人物として造形することになりました。
今にして思うと、理吉は離れた視点で書いてやって、サイコパスみたいに描いてやっても面白かったかもなんですが、本作、善玉も悪玉もサイコパスみたいな連中なので、本当、どうしようもないんですよねえ……。
いろいろ考えると、理吉を主人公に当ててよかったなあ、そんな気がしています。
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