発売二か月前記念、九月刊行「廉太郎ノオト」(中央公論新社)はこんな話
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先日文庫版『三人孫市』(中公文庫)の発売前情報をアップしましたが、実は今年、中央公論新社さんから単行本の新刊が出ます。以前からちょろちょろとお話しておりますものです。そう。
『廉太郎ノオト』
です。
まだISBNコードはおろか書影もできておらず、まだわたしの作業も手を離れていませんが、九月上旬~中旬には発売する予定になってます。
というわけで、発売二か月前記念ということで、『廉太郎ノオト』がどういう話かをお話しできればと思っております。
①瀧廉太郎が主人公です
日本における西洋音楽の揺籃期である明治時代に活躍した楽聖・瀧廉太郎が主人公です。皆さんも学校の授業などで『花』とか『箱根八里』とか『荒城の月』を教わったことがあるやもしれません。あと、有名な作品だと『お正月』なんかもありますよね。
かくのごとく有名な瀧廉太郎さんですが、実は24歳の若さでお亡くなりになってます。もし彼が長生きしていれば、おそらく日本の西洋音楽はちょっと違うものになっていたでしょうが、歴史にIFは禁物。ともかく、若くしてこの世を去った天才の姿を凡才谷津が精いっぱい書きました、という小説となっています。
あとこれはネタバレですが、いわゆる「瀧廉太郎教部省陰謀説」(瀧廉太郎の功績であるはずの作曲の多くを教部省が横取りしたことで廉太郎が悲嘆にくれ、その恨みを絶筆となるピアノ曲「憾(うらみ)」に込めたとする陰謀説)は取っておりません。なんでって? 説として成立しえないからだよ! そもそも「憾」という字は『恨む』意味合いは弱く、むしろ『残念、心残り』みたいなニュアンスの言葉ですからね!?
②上野とか千住、ライプツィヒなどが出てくるよ
このお話じゃ上野山にあった東京音楽学校が主な舞台になってます。とはいえ、勉強ばっかりしているわけではなく(ピアノを弾いてばっかりではあるんですが)、千住近辺に足を延ばしてみたり、浅草に行ってみたり、はたまた向島のある人の家に行ってみたり新橋のビアーホウルでビールを飲んだりといろいろやらかしております。とはいえ、やっぱりメインは不忍池や上野山となっております。
あと、彼が一時身を置いていた大分の竹田や独ライプツィヒも登場しますよ。
③音楽を材に取った芸道小説だよ
わたしはたびたび芸道小説と呼ばれるような一群の小説を書いてきました。実際問題、わたしの代表作の多くは芸道ものといってもいいでしょう。とはいえ、ほとんどは絵画や文芸といったもので、音楽は初めての挑戦となります。
とはいえ、やっていることは同じです。
音楽という芸道に身を捧げた人たちがいかに悩み、どう生き、そしてどのように自分の境地を広げていったのか。そんな姿を描きましたよ。
④朝ドラ的だよ
実はあんまり詳しくないのですが、どーも朝ドラ的みたいですよ。
まあ、朝ドラって近代から現代にかけての女性を主人公にした教養小説的な物語、みたいなイメージがあり、確かにそうかもしんない、とは思いました。
主人公こそ男(もちろん瀧廉太郎)ですが、当時の東京音楽学校は女性も大変多く、登場人物もかなり女性率が高いです。もしかすると、メイン登場人物を数えれば女性の方が多いんじゃないかという感じです。
これは瀧廉太郎さんの年譜を調べればすぐにわかることですが、彼の周りには多くの女性がいます。
師匠の一人である幸田延。
延の妹で海外渡航を争った才媛、幸田幸。
共に唱歌を作った東くめ、などなど。
日本の西洋音楽揺籃期を支えた女性たちの群像もまた、本書の特徴かもしれません。
⑤ピアニスト小説だよ
瀧廉太郎といえば作曲家という印象が強いですし、実際同時代においても作曲家として嘱望されていた節のある廉太郎ですが、実はピアニストとしても将来を嘱望された存在でした。いち早くドイツ流の演奏法(詳しくは本書でご紹介します)を習得し、ピアニストとしては国内に敵はなし、というところまで達した人物です。
もちろん作曲家としての側面も描きましたが、ピアニストとしての側面もかなり強く描きました。なので、ピアノを弾くシーンが非常に多いです。
と、上げてゆけば切りがないですが、こんな小説になっております。
皆様、九月の刊行をお楽しみに!
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