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1/26発売『小説 西海屋騒動』(二見書房)はこんな話② もうひとつの幕末を描いた話

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 さて、もうそろそろ発売する『小説 西海屋騒動』(二見書房)ですが、毎度の如く、どんな話なのかを書いていこうと思っています。

 皆さん、幕末ってどういうイメージがありますか?
 坂本龍馬? 西郷隆盛? 木戸孝允? おお、いいですねえ。
 そうそう、幕末というと、志士とよばれる人々が飛び回っていたイメージがありますよね。
 そのイメージは間違いじゃありません。
 幕末期には尊王攘夷論というある種の民族運動が勃興、それが大きなイシューとなって、排外的な行動を取らせたり、自分たちの思いを汲まない権力側に憤ったりすることにより歴史が展開しています。幕末期は確かに政治の時代であったといえます。
 けれど、ただ「政治の時代」とだけ見てしまうと、色々と見逃してしまうことがあるのもまた事実です。志士たちや官僚たちが必死で頑張っていた時代である反面、彼らと密接に、あるいは緩やかに拘わりながらも、庶民たちは普通の生活をしていました。
 そして、「普通の生活」と今書きましたが、昔も今も、この枠から弾かれてしまう人々がいます。江戸時代後期から幕末にかけて、そうした人々は「無宿者」として顕在化、社会問題となっていきます。そしてこれら「無宿者」の中にも政治の波に呑まれて頭角を現していく者や、体よく政争の鉄砲玉として使われていくのですが……。

 『小説 西海屋騒動』に描かれる登場人物の多くは、幕末の時代のうねりの中、「無宿」になった人々がなんとか自分の居場所を見つけようともがいているお話とも言い換えられます。

 本作は「もうひとつの幕末」を描いた噺であり、そのエッセンスを拾い上げた小説でもあるのです。その点において、拙作『奇説無惨絵条々』(文藝春秋)と似た小説であるといえます。

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