それさく文庫書影

「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ⑭柳生宗矩&黒田官兵衛

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 今回のライナーノーツは「某には策があり申す」に登場した二人です。

 柳生宗矩 黒田官兵衛
 曽(×)  某(〇)  孫(×)

 柳生宗矩に関しては、ぶっちゃけ思い付きといっていいレベルで登場させています(笑)
 とはいっても劇中の通り、島左近の娘を一族の嫁として迎えているとおり、柳生氏は大和の名族なので、当然島左近ともそれなりに繋がりがあったはず。さらにいえば、「某には策があり申す」の人物配置からいっても、若い敵役を厚くしておきたかったという事情があり登場させた次第です。
 本作では蒲生氏郷のもとに身を寄せている設定になっていますがこちらはフィクション。ただし、若いころ、仕官の口を求めて陣借りをしていた話は伝わっており、百パーセントウソというわけではありません。
 とはいえ、徳川に仕えてからの動きはそれなりに伝わっているので、そのあたりについてはいじっていません。史実でも、関ヶ原前夜は大和の国衆の取りまとめに奔走しているようで、本戦にも参加しているので、劇中で描かれたような場面があっても不思議ではないのでは。
 とはいえこの宗矩、島左近に一太刀浴びせるという金星を挙げながら、藤堂高虎に前座扱いされてしまうかわいそうな役回りになってしまいました。また書きたい人物その一です。

 お次にお話しする黒田官兵衛については……。軍師である島左近の欠落を描くために本作に挿入した人物です。
 「某には策があり申す」における島左近は『戦略が立てられない戦術の人』であり、戦略から上のことはすべて石田三成に一任する純粋軍人として描かれています。
 しかし、戦国時代において純粋軍人として生きられる人は限られています。
 なぜかというと、当時立場のある人の多くは自らの領地を経営する領主の面があり、誰もが戦略から上のことを考えないと生きてゆけないからです。
 というわけで、軍師として豊臣政権に近侍しながら、戦術だけの人に留まらない人物である黒田官兵衛の登場と相成ったのです。
 実際、本書を読んでいただくと、官兵衛は戦術の人に留まらない活動をしているとお気づきになられるかもしれません。そして本書は左近の視点で描かれているので官兵衛の腹の内は「理解できないもの」として描かれていることにお気づきの向きもあるかもしれません。
 『戦略から上の物事を理解できない、あるいは理解しようとしない』という点が、わたしが島左近に課した業であり、人間らしさなのであります。そういう意味で、官兵衛はよいリトマス試験紙になってくれたと思います。
 

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