本の棚 #151 『笑福亭鶴瓶論』
こんなにテレビに出続けている人を
ぼくはタモリさん、さんまさん、ビートたけしさん以外に知らない。
強烈な笑いを自らつくりだすというよりは
人との会話のなかでいつの間にか笑いをつくったり
ときには後輩からいじられたりしている。
あの歳で体をはることもある…
もはや変人ではないか、読む前から失礼ではあるが
明らかに異質なものを、感じる。
あの笑顔の細目の奥にあるものとは。
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「イヤやと思って拒絶することは簡単やけど、イヤやからよけいに近づくっていう方法を何十年もとってるんです」
人は愚かだ、だけどもその愚かさから
逃れることを選ぶというより
あえて向かっていくという変人ぶり。
嫌だと思ったらずっと嫌で終わる。
それでもいいかもしれないけれど
近づいたらその愚かさすらも滑稽に思える、
むしろそのポジティブな捉え方で
人生を歩み続けた結果として
今の鶴瓶さんのテレビ番組のスタイルが
あると言える。
誰でも真似できることではない。
だから愛され続けているのかな。
鶴瓶を突き動かすのは「これをやりたい」という思いではない。(中略)「これをやりたくない」という思いだった。
悩む中学生を無視したくない
理不尽な大人に従いたくない
そんなしたくないという思いが
鶴瓶さんの原動力のようだ。
「やりたいことが見つからない」
そう嘆いたって仕方がないじゃないか
「やりたくないことはなんだ?」
そう自分に問いかけてみるのもいいものだ。
「人を好きになってね。本気で人を観ていくと、世の中、ウソみたいなオモロイことがいっぱい起きてますから」
誰にでもおもしろいストーリーがある。
ぼくは激しく同意する。
みんな知らないだけなんだ、それが
とんでもなくおもしろいということを。
けれども鶴瓶さんはその手の話を拾って
みんなの笑いに変化させる。
笑いの魔法使い、笑福亭鶴瓶。
「人間は生まれてくれば必ず死ななければならないし、僕だっていつかは死んでいくのだけど、臨終の間際になって、楽しい思い出ばかりが、たくさん浮かんでくるような、そんな一生を送りたい。そんな仕事をしていきたい。」
誕生も死も日常の1場面であって
それ以上でもそれ以下でもない。
生まれるときはふわぁーっと生まれ
死ぬときはスーッと死んでいく。
死ぬ間際に自分の人生を振り返る
そんな時間があるなら、どう思えるか。
そのときは、楽しい思い出につつまれたい。
人生は、思い出づくりだ。
どんなシーンが頭の中を駆け巡るのか、
限られたコマ数だろうけど
めいいっぱいの幸せをあの世に持っていきたい。
そのために今を一生懸命に生きることを
鶴瓶さんは教えてくれている。
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