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リトルガール・イン・マッシュルームワールド

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140字小説として綴られた「キノコの世界」全14話を「リトルガール・イン・マッシュルームワールド」として纏めました。 フルカラーの挿絵と軽妙な語り口が魅力の物語となっています。
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キノコの世界

キノコの世界



 旅行鞄を抱えた少女が先を急ぐ。

 一人での初めての遠出に少女の胸が高鳴る。
 初めての土地。初めての景色。初めて見るキノコ。

「ーー大きなキノコ」

 世間知らずな少女は、ありえないサイズのキノコも不思議に思うことはなかった。

 そこはまるで別世界のように新しい発見に満ちていた。ーー別の世界だった。

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140字小説です。

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キノコの世界5

キノコの世界5



 手頃なキノコを傘がわりに、少女は食料を求めて歩きだす。

 周囲には見るからに毒々しいキノコもあれば、一見地味な見た目のものもあった。

 ふと丸いキノコが目に留まる。

「じーっ」

 それは慣れ親しんだキノコに似ていた。

「これ、見たことあるわ! シャンピニオンね!」

 少女は未知のキノコに手を伸ばした。

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 140字小説です。

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キノコの世界7

キノコの世界7



少女は重い鞄を抱えて走った。

「ちょっとまって!」

 逃げる背中を追うが、見失ってしまった。

 息を吐く少女の耳に話し声のようなものが聞こえて来る。
 少女は目が冴えるような青いキノコの影から声の方向をそっと様子を伺う。

 そこには色違いの生物の集団がいた。

 少女は思わず唾を飲み込む。

「増えてる!」

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 140字小説です。

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キノコの世界8

キノコの世界8



「巨人だー‼︎」

 小さな生物は、少女に気付くとガクガクと震え出す。

「ーーお肉が、喋った⁉︎」

 少女は今更ながらその生物がこの世界の住人である可能性に思い至る。

 なおも震える生物の警戒を解こうと少女は鞄からキノコを手渡す。

「よかったら、食べる?」

 生物は恐る恐る受けとる。

「あなたが神か?」

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 140字小説です。

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キノコの世界9

キノコの世界9



「このあたりにホテルはないかしら?」

 渡したキノコに小躍りしていたお肉ーーもとい小人達は、少女の問いかけに応える。

「うちくる?」

 小人達は大きなキノコに少女を座らせる。

「キノコでひとっとび!」

 ひとっとび? 少女は嫌な予感がした。

 小人の一人が小さなキノコを押す。

 少女はキノコと空へ飛んだ。

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140字小説です。

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キノコの世界10

キノコの世界10



「おそらあおい」

 自由落下の最中にもかかわらず少女はそれまでの人生を振り返る余裕すらあった。ーー走馬灯だった。

「これ着地どうするの⁉︎」

 はたして声は届いたのか、小人の一人が感情の読めない笑顔を見せる。

「神様なら大丈夫ーーたぶん?」

 神様なら?ーーそれだめじゃない?

 少女は意識を失った。

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 140字小説です。

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