婚約者に会えなくて発狂しかけていたら、政府に「別にそれでいいじゃん」と人生をぶっ壊された話②


 前回の記事で背景を説明したように、この記事では私とヨーロッパ在住の私の彼が「特段の事情によるビザ」を取得するために申請した書類を公開するとともに、そこからの大使館と入館の対応を公にしたい。①我々が申請した書類と内容、②それに対する政府の対応、をできるだけ客観的に紹介したいと思う。
 合計で100ページ以上の書類を出したし、大使館と入管に言われるまま4回申請し直したし、数週間で出ると言われた結果を2ヶ月待ったけれど、申請は通らなかった。そして、なぜ却下されたのか、理由も教えてもらえないままだ。
 もちろん私は怒り狂っているし絶望の中にいるので、客観的に評価するのは無理なのだが、それでもできるだけ主観を排除した形で(後記:無理だったので主観を分ける形で書きました)、私たちと政府のやりとりを紹介したい。


1. 提出した書類

 特段のビザを申請するために、私たちはまず彼の国の日本大使館にメールで連絡をした。ここで特段の事情によるビザ申請をしたいことを伝え、必要な書類を教示してもらった。それを元に、私たちが準備・提出した書類は以下の通りだ。(1)〜(12-1)は大使館に提示された提出書類リストに並べられていたものだけれど、(12-2)〜(15)は私たちが付け足した方がいいと判断して加えた書類だ。【】の中はそれぞれの書類のページ数(A4サイズ)。実際の書類はこの記事の最下部にて。


(1)カバーレター
(2)彼のパスポートのコピー【1】
(3)私のパスポートのコピー【1】
(4)ビザ申請書【1】
(5)申請書用の写真【1】
(6)質問用紙(彼の国籍や生年月日を記入するシート)【2】
(7)入国申請の理由書(彼が作成したもの)【3】
(8)受入者(この場合筆者=私)の住民票のコピー【1】
(9-1)彼の銀行口座の預金証明書【1】
(9-2) 私の銀行口座の預金証明書【1】
(10)招へい理由書(日本政府指定フォーマット)【1】
(11)入国後の工程表(日本政府指定フォーマット)【1】
(12-1) 入国申請の理由書(私が作成したもの) 【3ページ】
(12-2) デートのために利用した飛行機や公共機関の搭乗証明など【30ページ】
(13)航空券の予約証【1】
(14)交際を証明する書類(これまでの航空券の履歴や写真) 【16】
(15)私の両親からの嘆願書【1】
【合計 67ページ】


2. 大使館とのやりとりと、入管からの要望

 上記の書類をまとめて、現地の日本大使館に提出した。これ以降も、私たちの窓口となったのは全て日本大使館職員である。この記事ではちょくちょく入管の名前が出てくるが、入管からの要望は全て日本大使館を通して私たちに伝えられたことを注記しておきたい。私たちは入管からの連絡を転送するように何度も日本大使館職員に頼んだのだが、結果として一度も対応してもらえなかった。なので、大使館と入管との間でどのようなやりとりがあったのか本当のところは分からない。私たちが非人道的だと思った要求の数々が、実際に入管から寄越されたものなのか、大使館が罪のなすりつけで入管の名前を出しただけなのかが分からないのだ。が、知る由もないのでここでは大使館職員に伝えられた内容をそのまま書く。

①2021年8月15日
 在X国日本大使館に、上記67ページの書類を統合したものをメールで提出する。彼が送り主で、CCに私が含まれていた。私は問題なくメールと添付ファイルを受領。

②2021年8月28日頃
 返信がないため、彼が大使館に電話をして確認する。職員曰く「届いていない」とのこと。彼が再度同じ書類を同じ宛先に送ったところ、無事に受領されたとの連絡。へぇ〜、そんな不思議なことがあるんですね。

③2021年9月6日
 大使館に印刷して書類を持参するように、と言われたため、彼が印刷してファイリングをし、在X国日本大使館に直接持ち込んだ。この際、(12-2) デートのために利用した飛行機や公共機関の搭乗証明などと、(14)交際を証明する書類を減らすようにと言われ、全体で35ページに減らした。これまでの行動履歴や関係性を証明する書類なのに部分的な情報にして良いのか?と疑問に思うものの、大使館職員の言うことに従う。
 大使館職員曰く、「非常によくまとまっており非の打ちどころがない。全ての申請者がこのようなファイルを作ってくれればいいのに。おそらく問題なく通るだろう、結果を2週間程度を待つように」。このフィードバックは非常に嬉しかったし、きっと申請は受理されるだろうと信じて待つことにした。

③2021年9月24日
 大使館職員から彼に電話があった。曰く、入国管理局から「彼が既に在留資格認定証(CoE)を有しているのになぜ特段ののビザを申請しているのか」について理由書を提出しろとの要望があったとのこと。さらに、提出済みの理由書もさらにシンプルにしろ、とのことで再度作成して提出した。

<補足と主観>
 補足をすると、彼は元々、年内中に学生ビザで日本に来ようとしていて、入学にかかる手続きを全て済ませていた。日本で長期的に滞在するには、ビザに加えて在留資格認定証というものが必要になるのだが、全ての申請を終えて受理をされており、入管からの在留資格認定もおりていた。
 資格は有しているけれど、そもそも日本がずっと鎖国状態を続けていて、外国人留学生の入国さえ受け入れていないのだから、在留資格認定証を有しているところで入国ができない。オリンピックパラリンピックの予選が始まるずっと前から準備してきたのに、彼は入国できず、世界各国からのアスリートやその関係者の入国はオールオッケーという謎の状況を生んだのは日本政府なのに、なぜそれを私たちが説明せねばならないのだろう。
さらに、今回特段の事情によるビザを申請するのは、かなり深刻な状態にある私の祖母に会うためと、婚姻の手続きを済ませたいという理由なので、学生ビザとは全く別のことである。大使館と入管がどのような書類のやりとりをしているか分からないけれど、ここで私たちの申請書が全く読まれていない可能性がある、というかその可能性が高いと思った。私たちが大急ぎで特段の事情によるビザを申請する理由が全く伝わっていない。そもそも最初の申請からもう1ヶ月以上経っている。この間にも祖母に死が近づいている。頼むから、私たちの理由書と申請書を読んでくれ。

④2021年9月25日
 これは大使館、入管とのやりとりではないのだけれど、大事なイベントだったのでここに書く。この週、いよいよ祖母の主治医から「覚悟をするように、面会の規制を解除するので祖母に会いたい人は今のうちに対応するよう。」との連絡があった。急いで実家に向かい、祖母の病院を訪れた。結果を待っているこの1ヶ月強の間に祖母はご飯を食べることもできなくなって、点滴から栄養を取るようになっていた。最初に申請書を出した8月にはまだなんとか自力で動くこともできていたのだが、もう完全に寝たきりの状態になってしまった。1日の大半を寝て過ごしていて、私が入室した時も寝ていたんだけれど、おばあちゃん、と手を握ったら、目を開けることもほとんどなかった祖母が私に気付いてくれて、強く手を握り返してくれたのだった。私も強く握り返して、「もうすぐ私の大切な人が日本に来てくれるから、おばあちゃんにどうしても会ってほしいから、もう少しだけがんばってほしい」と伝えた。もう耳も遠くなっていたから、聞こえたかは分からない。でも私の目をじっと見つめてくれて、さらに強い力で握り返してくれた祖母を想うに、きっと感じ取ってくれていたのだと思う。


⑤2021年10月2日
 大使館から彼に「状況はかなり厳しい」との電話があった。そして、「入管が、特段の事情によるビザでの滞在中に、婚姻の手続きを全て済ませ、婚姻届もしくは結婚を証明する公的な書類を提出すると約束するのであればビザを出すと言っている」と告げられる。
<主観>
ハアアア????????
 婚姻に必要な手続きはもちろん来日理由の大きな一つだけれど、祖母が危篤の状態でそんな約束ができるわけがない。そもそも、入国後に2週間の自宅隔離期間があるし、時間的な制約もある中で、全ての申請が終わるか分からない。国際結婚に係る手続きの大変さを、ビザの発行にも携わる貴方がたが知らないわけなかろう。そして、家族や親戚へ挨拶したり、職場への説明を済ませたり、事前に済ませたいことがたくさんある。婚姻の日だって自分たちで決めたい。大安の概念を彼に説明したりして、ウンウン悩んで一緒に人生を歩む日を決めたい。一年以上振りに再会できるのに、なぜそんな個人の人生を左右することを決められねばならないのだ。意味が分からない。お前らは何様だ。さんざん結果を引っ張って、あれこれの要求を出して、挙げ句の果てにビザをやるから婚姻届を出せだと?あまりの越権行為だ。

⑥2021年10月4日
 大使館に「この滞在の目的は婚姻届を提出することではなく、両親や祖母へのあいさつを含めた婚姻に必要な手続きを済ませることである。私たちはそれを重要なプロセスだと位置付けていて、どうしても欠かすことができないし、状況を鑑みると滞在中に結婚を済ますことは現実的ではない」ことを説明する用紙を提出。

この日、祖母が息を引き取った。


2021年10月6日

 大使館から彼に電話で「ビザの申請が却下された」との連絡があった。理由は詳しく教えてもらえなかった。
<主観>
 私たちの申請書に問題があったのだろか。CoEを取得していたら特段の事情によるビザは申請できないのだろうか。何がいけなかったのだろう、それさえも分からない。私たちに問題があるのかもしれないけれど、それならば理由を提示してほしい。私たちは真摯に言われた要求に全て答えてきたのに、どうして却下する理由も教えてくれないのだろう。10月4日の追加資料で、「はいわかりました!日本で滞在できるのは1ヶ月くらいだし、そのうち2週間は隔離期間で何もできないど、婚姻届も出します!」って見えすいた嘘でもついたら通してくれたの???


次の記事では、この一件のまとめとして、やりどころのない怒りと悔しさと脱力感と、この状況を生んだ政府への問題提起を書き連ねる。

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 これ以下は、参考資料として実際に提出した書類を一部公開する。書類は窓口によって英語、日本語、現地語のものが入り混じっていたのだが、noteでの使用言語に合わせて日本語で、かつ自由記述だった書類を公開する。
公開する理由の一部に、私たちが特段の事情によるビザの申請をする時に全く参考になる情報がなかった、ということもある。同ビザの申請を検討している方の助けになればいいのだが、いかんせん私たちの申請は通らなかったので、見本には程遠いと思う。その点はご了承いただきたい。
もし全ての書類を見たい方がいらっしゃったら個別にご連絡ください。

(12-1) 入国申請の理由書(私が作成したもの)

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注記:これ以外にも公開したい書類はまだまだあるのですが、いかんせん公開準備に時間がかかるのでおいおい載せていきます。

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