森田観察日記2018.08.14「硝子の神経と生存戦略」

 お盆の里帰りで母といろいろと話をして、
「自分は神経が繊細なことはたしかだ」
 ということで一応、納得する。
(小学校のとき先生に「硝子のような心だ」と云われていたらしい。知らなかった…)

 いろいろの知識や経験を通して「そういう神経を補強するような手段をいろいろ身につけただろうけど」「補強するのにもエネルギーを使う分、疲れやすいかもしれないし」「感じ方は生来の気質だし、筋肉を鍛えるようには変わらないんだろう」(母の云い方)。


 わたしは今まで何回か、鬱状態の時期があって、自分の人生を何となく「鬱の時期」と「元気だった時期」に分けて捉えていたのだけど、
 その中に「見せかけの回復状態」みたいな時期も混ざっていたのではないか…と思いはじめている。
 つまり、なにかの感覚(たとえば恐怖感や緊張感)を切り離すことで、外から見るとまあまあきちんと動いているように見える、という時期。
(精神医学のことばを借りれば、解離状態の時期。)


 ざっくりまとめると、

 解離→鬱→解離→回復→解離→鬱→解離→回復→解離→鬱→解離…

 みたいな経過を辿ってきた…のではないか、
 というのが、このごろの仮説だ。


 それで、…解離というものは、生活に支障さえ出なければ、神経を守るための自然な心理反応だということなのだけども、
 これだけ頻々と「鬱状態」や「解離しないと生活が回らない状態」になってしまうのが、「ものすごいしんどい環境にいるから」ではなく、「硝子のような神経だから」なのだとしたら、
 十年ほど持っていた生存戦略のようなものを、根っこからひっくり返さないと、

「自分は条件の悪い物件なのだから、積極的につらい環境に飛び込んで、大変な仕事をこそ引き受けて、役に立つ技術を身につけて、その技術を求められることでほそぼそと生き残ろう」
 という考え方を捨てないと(少なくともいまは一回捨てないと)また速やかに潰れて鬱になる可能性が高い。

「自分が強くなること」
 ではなくて、
「弱くても生きていける環境を整えること」
 しかも、
「弱くても生きていける環境を整えてもらえるように、ほかの人に(めちゃくちゃ)助けてもらうこと」
 くらいまで譲歩しないと、延々と解離と鬱をわたり歩くことになるのじゃないか。


 自分で書いていて、こんなことを考えていたのか…こんなヘンな信念があったのか…と思って呆然としている…なんというか ひとつひとつの気持はわからなくもないのだけど、接続がおかしいというか、理屈が通っていないというか…

(「条件の悪い人間」という云い方に腹が立つひとや悲しくなるひとがいたら申し訳ないのだけど、この気持は今もある 性別不詳だし精神疾患だし経歴もめちゃくちゃだし…初対面の人に説明できない
 これは自分に対してだけで、同じような状況のひとがそのためにつらい目に遭わされていたら「ひどい」「今すぐやめてほしい」と思うんだけど…)


 「弱くても生きていける環境」
 ということを考えられるようになったのは、つれあいのおかげが大きいと思う
 実家以外の家族ができることや、仕事以外の暮らしの場ができることは、自分には長いあいだ想像もつかないことだったし
 ありとあらゆる話を聞いてくれて、タブーな話題や受けつけない話題というのもなく、
 自分や親兄弟のなかではもう「ぐーはこういう奴だから」「ずっとこうだから」と当たり前になって、話題にも上らないことを、つれあいに「それは大変じゃない?」「それはしんどくない?」と指摘されて、初めて気づくことがたくさんあった

 つれあいが
「家にいて楽しいなら家にいたらいいと思う」
「仕事してぐったりしてるより好きにしてて元気なほうがいい」
「やれることやったらいい」
 と云いつづけてくれたことで助かったことがたくさんある
 そういうふうに云うのがつらいときもきっとあると思うんだけど とにかくそう云いつづけてくれるから ずっと云ってくれてることが、いまはとても助かっている


 あとは蛇足ですがついでなので
 こんなに何もしなくても褒められて構われる生活は初めてです ここまで自分が集中的に可愛がられる生活はたぶんほんとに人生初だと思う…(双子だったのでたぶん恐らく)
 つれあいとのベタ褒め合戦は、まだ友人付き合いだったころ、お互いに相手の生活が崩れまくってるのが心配で「寝てえらい!」「ごはん食べてえらい!」とやってたのが発祥ですが とても健康にいい気がします
 ときどき「ゴミを出しました!」「タオルを替えました!」と自己申告して褒めてもらいます


 最後に
 これまでに得た知識や技術や、そういうものを得るために使った思考力や記憶力は、たしかにわたしが持っていたものだし、完全に失われたわけでもなく、また使えるようになる可能性があるのだ、ということは憶えておきたい。


《メモ》

◆ほかの人にはあまりない(珍しい)感覚なんだなと思ったこと
・驚いているわけではないのにビクッとする(膝蓋腱反射のような感じ。物音への反応が多い)
・痛くないけど痛いときのような体調になる
・吐き気はないけど吐き気がするときのような体調になる
・知らない人の集団などに会うと緊張する/怖い(小学生とすれ違うのもかなり緊張する)

◆自分視点の困りごとのメモ
・一瞬前のことを忘れる、わからなくなることが多い(生活に大きな支障はない範囲)
・頭がぼーっとして何をやるにも時間がかかる
・何もなくてもプレッシャーのようなものがある
・複数の視点で同時に考えてるような、テレビのチャンネルが変わりつづけていて止めるのも消すのもできないような感じになる
・自分の脳内で起こったことと、他人と共有できている情報の区別が曖昧かもしれない(度合いは精神状態によって変化する)

◆つれあい視点の困りごとメモ
・よく知らない人の前で声が出ない
・薬を飲まないと眠れない
・電車で具合が悪くなる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?