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ZOZO創業者の新事業「小さな一歩」のビジネスモデル考察 他の保証ビジネスとの比較

こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。

ZOZO創業者でスタートトゥデイ社長の前澤友作さんが、養育費を元パートナーに代わって支払う保証サービスを行う「株式会社 小さな一歩」を設立したことを発表しました。

 同社のサイトでは、「養育費を受け取れていても、支払いが遅れたり滞ったりで安定しない場合、額が少ない場合なども、受け取るべき適正な金額の養育費を、決められた日に安定的に受け取ることができるように支援します」と事業内容を説明。養育費の受取りは「毎月ごと受取り」か「一年分の一括受取り」のどちらかを選択できる。

結論から先に申し上げると、非常に素晴らしい取り組みだと思います。

ただ、養育費の保証という点をが分かりにくく、「弁護士法やサービサー法に反するのでは?」「保証料15%~25%って高すぎない?」という疑問も出てくると思います。

本記事では、同社のビジネスモデルと法的枠組みについて少し解説をしていきたいと思います。

債務者に断りなく保証人になることは民法上可能

法学部卒の方であれば常識の範囲に属することですが、保証人は債務者に頼まれなくてもなれます(極論を言うと債務者が嫌だと言ってもなれます)。

民法
(委託を受けない保証人の求償権)
第四百六十二条 第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。
2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
(略)

この場合の債権者は養育費を請求するひとり親、債務者は養育費を支払う義務がある元パートナーです。
保証人が債務を弁済すると、債務者に弁済した金銭の支払いを請求することができますが、この場合の債務者への請求権のことを求償権といいます。

委託を受けない保証人の求償権は現存利益の範囲に制限されています。

債権回収業者とは何が違うのか

原則として、他人の債権の回収代行をするには弁護士資格が必要です。

例外は、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」等で、法務大臣の許可を受けた株式会社は、特定債権について管理回収業を行うことができます。

しかし、他人の保証人になること自体は、回収代行でも債権譲渡でもないので、上記の規制対象外です。

他人の保証人になるビジネスとして、家賃債務保証業があります。

他人の家賃支払いを保証して、万が一家賃を支払わなかったときに代わりに弁済し、その対価として保証料を徴収することにより収益を上げるビジネスです。

家賃債務保証業には登録制度がありますが、そもそも回収代行や債権譲渡ではないので、無登録でも営むことが可能です(国土交通省への登録は任意)。

「小さな一歩」は養育費保証以外にもひとり親をサポートする活動(書面作成など)をされるようですが、あとはその部分等で弁護士法違反などの問題がないかという問題になります(弁護士法は業として法律事件を扱ったりあっせんしたりを禁止しているので、無償でのサポートであれば弁護士法72条等違反の問題は生じません)。

保証料は適正か?

保証料15%~25%が高いかどうかですが、この点はこのサービスを使うひとり親が決めればよい話ではないかと思います。

もともと養育費を受け取れていない親は、自ら、又は弁護士に依頼して請求をしなければ1円も養育費が受け取れていません。

「自分で請求した方が安い」「弁護士に頼みたい」という人はそういった方法を使えばいいだけです。

従来のオプションが取れなかった方にとっての新たな選択肢が増えただけで、使うかどうかは自己判断で決めるべきことではないかと思います。

このビジネスモデルのユニークな点

普通、保証ビジネスは債務者のニーズに応えるものです。

家賃保証もそうですし(保証人がいないと入居できない)、信用保証協会の保証事業も、融資枠の拡大というニーズが前提にあります。

しかし、このビジネスは債権者のニーズを前提にしています。
法律の常識に囚われているとなかなかこういう発想は出てこないのではないでしょうか。

実際の養育費の請求には様々な障害があるので、おそらくですが、大きな収益を上げるようなビジネスにはなかなかならない可能性があります。

ビジネスとしての形を取ったのは、その方が大きなアクションにつなげられるという判断によるものだと思います。保証の体裁を取らずにただ養育費をサポートすると法人から個人への贈与となりかねず、税務上の煩わしさが生まれますし、きちんと費用を負担してもらって養育費不払いの問題にコミットした方が継続的にこの問題に取り組むことができます。
もしこの事業が赤字になり、数値として養育費不払いの現実が可視化されれば、それはそのままひとり親の苦境を可視化することにつながります。
本当に必要な事業であるとアピールできれば国が動くこともあり得ます。

このようなビジネスは、お金があれば実現できるという類のものではありませんし、苦しい立場に立たされているひとり親のための「大きな一歩」につながるものだと思います。

この事業が多くの困っているひとり親の助けになることを切に願っています。

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リリース時に朝日新聞にも紹介されました!

」スマート法律相談は、株式会社リーガル・テクノロジーズと、証券会社のシステムを開発する株式会社トレードワークス様が共同で開発しています。


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