見出し画像

Lending Clubからみる中銀対応の可能性

Lending Clubは2007年に米国で誕生した、所謂Fintechと呼ばれる、P2P (Peer to Peer、個人間)貸付の先駆けの会社で、今はニューヨーク証券取引所にて『LC』というコードで上場されている。同社は個人に対して、上限40000ドルまでの無担保ローンを提供するプラットフォームを提供し、資金の提供者は同社以外にも様々な投資家(機関投資家、銀行など)などがいる。

直近のニュースとして、上記記事のようにLending Clubは、コロナショック前の2020年2月にネット銀行を買収発表した後に、コロナショックを迎え、同年4月にはリストラを発表。また同年5月に1-3月期の決算を発表。ローンの評価損などで同社四半期は赤字になったとのことが、借り手の経済状況自体は必ずしも悪化していない、というような内容。一方で、今後は4-6月期にローン発行残高は9割減となるとみているようで、同時に返済延長などの借り手対応を進めていく、と発表。

話はちょっと変わりますが、上記記事(2020年2月)にあるように、2008年の金融危機の経験から、米銀などは新たな貸倒引当金を積み立てる会計ルールが2020年から始まった、とのこと。詳細は下記引用をご確認いただきたいのですが、要するに商業銀行は個人貸付や信用力の低いローンから手を引くような流れは見える。

『新たな貸倒引当金の基準はCECL(Current Expected Credit Losses、現在予想信用損失)と呼ぶ。米財務会計基準審議会(FASB)の独自ルールで20年から適用される。ローン組成時に、今後発生しうる損失を合理的に予測し、前もって計上するというものだ。
米連邦預金保険公社(FDIC)によると、07年に692億ドルだった米銀全体の貸倒引当金は08年に1762億ドル、09年には2500億ドルにまで急増し、5年間で約9倍に膨らんだ。一気に引当金を積み増した結果、急激な貸し渋りを招いた。
この反省から誕生したのが「フォワードルッキング」で引き当てを計上するCECLだ。大きく影響するのが、消費者ローン。銀行関係者によると、「生涯にわたる返済リスクを数理モデルを使って算出する必要がある」結果、特に返済期間が長い住宅ローンや学生ローン、信用力の低いカードローンの引き当てが増えるとされる。』

あまりにも新たな貸倒引当金導入のタイミング(2020年から)とコロナショックのタイミング(2020年3月から)が偶然だった。米商業銀行が徐々に手を引いていくような消費者ローンのエリアに、Lending Clubのような所謂ノンバンクと言われるような会社が入ってくる、流れになっていた。だが今後コロナショックによる経済後退、また個人ローンの信用悪化懸念により、このようなノンバンクの貸付状況・経済前提への影響もあるでしょう。

ここからはただ妄想ではあるが、米中央銀行のFEDはこのコロナショックの対応として、金利引き下げ、国債購入の上限撤廃、そしてCPや社債を市場から購入する、という意思を発表した。もしこのような手段でも不十分とFEDが判断した場合には、以前からモーゲージ(住宅担保ローン)を買っているように、個人ローンの信用悪化を止めるために、このLending Clubが入っているエリアにもFEDが入ってくるのではないか。少なくとも中央銀行の政策の先端を行っている日銀はこっちに向かっているような気がします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?