金融システムの存在意義を危機時に発揮

既に日経にも書かれており、トピックとしてはあまり新鮮味はないものの、今後の経済活動に重要なことだと思うので、書いてみます。

米国や欧州等の主要先進国では、コロナ禍における突然の資金需要に、銀行システムが社会インフラの一部となり対応できていた、との見られている。それは銀行が中央銀行による流動性供給の現場窓口となり、実体経済に資金供給を行い、緊急時対応を取っていたから、という見方からである。

銀行は、2008年に起きたリーマン・ショックを受けて資本規制が強化されたことに加え、低金利で利ザヤに縮小圧力がかかっていることから、収益性が低下していた。…預貸と決済を中心とする伝統的な銀行業は斜陽産業のように見られていた。
しかし、コロナ危機は、銀行が不可欠の社会インフラであることを再認識させた。中小企業や家計はいざというときには銀行に頼るしかない。米国で対策の柱となった米連邦準備理事会(FRB)のメインストリート融資プログラムでも、銀行は仲介役に位置付けられている。

その結果、各国銀行の決算ニュース(上記を参照)を見る限り、多くの貸倒引当金(またフォーワードルッキングな見方で多めにしている面もあるが)を積んだことで、元々収益性が落ちていた銀行ビジネスを一時的に更に赤字にしたこともある。

また欧州ではEU域内での復興基金が設立され、今後のコロナ禍での協調を示している一方で、下記記事のように同基金の実行は2021年からで、2020年内の各政府からの財政政策が9月などで一旦締め切りとなった場合には、貸出余力の限られている欧州の銀行と、今後の第2/3/4波のコロナ感染拡大時に借入ニーズの急増をどう対処するか、という点で懸念も上がっているようだが、最終的にはやはり銀行システムをどう活用して、という議論である。

加えて、中銀の市場監視・調査の能力や適切な人材配置も、今後の金融システムを構築していくために、重要な役目となるだろう。下記の通り、2020年3月の高いボラティリティをどう見るか、など既にFRB等では調査が始まっているとのこと。

例え今後景気回復したとしても、日本も含めた先進国の銀行の業績見込みは、芳しくないことに何の変化もない。

ECBのルイス・デ・ギンドス副総裁がスピーチ(Building the Financial System of the 21st Century)で、「銀行セクターはパンデミックのストレスの中でも、頑健であることを示せた。しかし、それは将来にわたり逆風を受けないということではない。収益性の低下という構造問題も抱え続けている。…収益源の多角化などが、将来に向けた方向性だ」

最後に、前日銀副総裁のコメントを引用したい。

(高い運用技術を持つ海外の資産運用業者など)新しい領域へ高度金融人材を誘致し、日本の金融機関と互いに鍛え合うことが金融機能の強化につながる。

日本は本当に耐えられるだろうか、そんな甘い議論をしている時間はあまりないのかもしれない。


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