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高炉型製鉄の今後①

よく日経を読んでいると、以前は『鉄は産業の米』とか言われたり、『鉄は国家なり』というドイツ帝国の首相、ビスマルクの演説が出てきます。確かに産業革命後、鉄鋼生産量は国力を表す指標として見られてきましたが、やはりその指標の意味合いが変わってきているようです。簡単に業界動向をまとめておりますので、下記をベースに書いていきます。

2008年の金融危機やコロナショック以前から、鉄鋼業界は冴えない内需の中、中国など外需依存、且つコスト高の構造となっておりました。そんな中75%の国内生産を誇る高炉型鉄鋼会社は、再編合併が行われ(新日鉄と住友金属、そして日新製鋼は今、日本製鉄となり)、今は3社(日本製鉄、JFEと神戸製鋼)のみとなりました。
しかも3社のなかの2社(日本製鉄神戸製鋼)の上工程は自身も公表しているほどの赤字体質であり、3社とも大事な上工程休止をしながら、所謂構造改革には取り組んでいました。(スピード感とかは別にして)

そこに急激な需要減となる、コロナショックが畳みかかって、更なる構造改革を含めた事業展開への圧力がかかっている、ということです。

この問題の影響は様々なところにあると思っています。例えばですが、

①更なる縮小均衡トレンドの加速に伴う地方経済の悪化ー>製鉄所は京浜や四日市など所謂工業コンビナート近くや地方都市に多く設置され、一般的にその現地経済や雇用を支えてきた、のですが、製鉄所休止に伴い、そのシステムがもう崩れるのでは、ということ。(地方自治体もっと財政的にも、人材的にも大変になりそう?)

②更なる業界再編の可能性ー>1つの業界に3企業(通信やコンビニなど)にまとまる、といった話も聞きますが、そのような流れが高炉・電炉問わずに鉄鋼業界(日本製鉄と神戸製鋼vsJFE、とか)なのか、非鉄業界も巻き込んで、促進されるのではないでしょうか。また同時にコロナショックを通じて、コスト安による海外生産に依存していた医療物資が不足、という事態にも散見されました。
鉄鋼業界が今後どうなるかわかりませんが、国内生産の縮小トレンドにより、どこまで(生産能力やノウハウなど)国益として守るべきか、という人口減・市場縮小の日本におけるこのような大規模製造業の立ち位置が重要だな、と感じています。

③不確定のままで株価は継続的な下落基調ー>(グローバルでもですが)業界のトレンドとして拡大基調が見えにくい中、日本製鉄やJFEは過去五年(2020/5/14時点)の株価はそれぞれ72.53%、76.25%の下落、ということで、高配当利回りであろうが、PBRが0.3倍未満であろうが、ダダ下がりし続けている、ということ。

日本経済を支えてきた鉄鋼業界のような重工業(製造業)は、今後も縮小し残ると思いますが、同時に業界として価値を見出してもらいにくくなっている、という現実。また既に効率が高いといわれ、生産性向上では解決できないこの流れは遅かれ早かれ他の製造業にもやってくる、という流れだけは捉えておきたいです。

#COMEMO #NIKKEI

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