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#05_45歳定年制時代のキャリアの築き方

こんにちは。チェンジマネジメントコンサルタントの江田泰高です。

以前のnoteでは、VUCAの時代において企業にも個人にもチェンジマネジメントが求められているとお話ししました。

今回は、働き方に注目をして、現代のビジネスパーソンのあり方についてお話ししていきたいと思います。


終身雇用制度は崩壊する

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前回のnoteでも申し上げたとおり、社会は今、大きく変わろうとしています。これまでの日本では終身雇用制度が浸透しており、60歳ないしは65歳まで同じ会社でずっと働くことが一般的でした。しかし今は働き方が多様化していて、転職やフリーランスという決断をする方が増えています。

2019年の5月、トヨタ自動車社長の豊田章男氏は終身雇用について、このように言及しました。

「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」

日本屈指の大企業であるトヨタ自動車が、終身雇用は難しいと提起した。これは大きな波紋を呼びました。

勤続年数が長い人材ほど、転職しづらい

私もアトワジャパン株式会社で中途採用の支援をしていると、40代50代で早期退職されて、仕事を探してる方とたくさん出会います。子育てが落ち着いて、自分のやりたい仕事にチャレンジしたいと転職を希望される方とご面談させていただくことも多々あります。

しかしながら、正直なことを申し上げると、同じ会社に勤め続けた40代の方は、転職市場での価値は下がっていく傾向にあります。

なぜか。

理由は大きく3つあります。

1つ目は、ポスト。40代を過ぎると、多くの方が管理職に昇進します。とはいえ、全員が管理職に昇進できるわけではありません。管理職としての転職を希望されても、応募できるポストが少ないのが現状です。

2つ目は、考え方。企業に長く勤めているとその企業の考え方に染まり、凝り固まった考え方しかできなくなります。いまの会社では成果を出せるけれども、他の会社の新しい考え方に染まることができず、成果を出せない傾向があります。

3つ目は、成長スピード。同じ会社に長くいると、あまり学ばなくてもなんとかなってしまう状況があります。そのため、転職やフリーランスを繰り返す中で新しいチャレンジに取り組んできた方と比べると、実力に差が出てしまうのです。

だから企業側としても、勤続年数の長い40代を過ぎた人材には抵抗を感じ、転職が難しくなってしまうのです。

45歳定年制は、チャンス?

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2021年9月、サントリーホールディングスの新浪剛史社長は、経済同友会の夏季セミナーでこのような発言をしました。

「45歳定年制にする。個人が会社に頼らない仕組みが必要だ」

議論が巻き上がった言葉ですが、真意まで分かっている人はなかなか多くないと思っています。その後の記者会見において、新浪氏は次のように補足しています。

「定年が45歳になると、33~35歳でしっかり勉強して、自分の人生を考えるようになる。私たちのときは他の企業に移るチャンスが少なかったが、今はチャンスが出てきている」
※新浪氏は当時62歳

この言葉を聞いて、私は愛がこもった言葉だなと感じました。

社員に対して、ずっとこの会社にいてくれてもいいよというのは簡単ですし、それは経営者としては当然のことだと思うんです。しかし新浪氏は、優秀な人材がその会社で活躍の機会がなかったとしても、「他の会社で活躍する機会を設けることができる。個人にとっても会社にとってもチャンスが広がる」と述べています。

そして、どんどん社内でスキルアップしないと、他の会社に行くチャンスがないんだよという警鐘を鳴らしているのです。

私も以前、外資系の会社で働いており、部下には「君がずっとこの会社にいるかどうかわからない。でもどの会社に行ってもやっていくだけのスキルを身につけようね」と伝えていました。通ずる部分があると感じます。


新たな概念「定年新卒」が生まれる

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これからの世の中は、「定年退職」から「定年新卒」という考え方が広がっていくと考えています。

「定年新卒」は私が考えた造語です。定年した後に、新卒のように、新しくチャレンジをしていく、次のステージに行くという意味を込めています。そして次のステージを見越した定年の年齢は、45歳迄であるべきだと考えています。むしろ、遅すぎるかもしれません。

今は60歳で定年しても、20年以上働き続ける時代です。60歳を迎えたときの選択肢は、いくつかあります。

会社を起業する。フリーランスとして働く。会社の顧問になる。さまざまな道がありますが、特に起業を選択する、またはフリーランスを選択した場合は、非常に大きなエネルギーが必要です。私自身も起業しているので、そのエネルギーの膨大さはよく分かっています。正直、60歳になってからスタートするのは大きなリスクだと思います。というのも、そもそも現役時代と比べて体力が衰えています。そして、やはり最新のITトレンドに追いつけなくなるケースが多いからです。

では60歳での就職・転職ではどうか。こちらも正直いうと、厳しいです。

実際に、転職のご支援で大手企業で働いていた60歳の方からこのような声を聞きます。

「30年以上いろんな仕事をした経験を生かして、社会の役に立っていきたい。コンサルをしてみたい」

しかし会社の看板なしで、かつ仕事経験だけで食べていくのは困難です。なぜなら、30年前の経験は、今の経験とあまり関連性がないからです。30年前を思い返して見てください。1990年代Windows95が出たばかりの頃ですよね。その頃の経験が、はたして今に生きるでしょうか。答えは否です。

そうなると、経験が生きる部分は過去10年くらいの経験です。しかし60代だと、過去10年は管理職としてマネジメントをしている場合がほとんどです。プレーヤーとして、積極的に手を動かしていなかった方が転職するのは非常に難しいと思います。

以上が、60歳でキャリアチェンジをするのが難しい理由です。


45歳定年制に向けて、何をすべきか

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先ほどの新浪氏の話に戻すと、海外の経営者は40代が主流です。一番脂がのっているこのタイミングで、ネクストキャリアを検討するのは非常にいいことだと考えます。45歳を1つの区切りとして、それに向けてどんな努力をしていくか、若いうちから意識づけすることが非常に重要だと考えます。

定年退職45歳は、むしろ遅いとも感じています。新卒から5年から10年あれば、中堅社員として十分活躍することができますし、先ほど申し上げたとおり、20年前30年前の経験というのはあまり活用できません。基礎的な知識やスキルをなるべく早く身に付けて、40代で会社に依存せずに自分だけで食べていけるだけのスキルを構築するべきだと考えます。会社で働き続けていてもいいですし、フリーランスや起業でもかまいません。手に職をつけておくことは、全てのビジネスパーソンがやるべきことだと私は考えています。

今や大手企業でも、簡単に倒産する時代です。IoT・デジタル化・DXなどが叫ばれていますが、自動化によって失う仕事は少なくありません。会社から言われた仕事だけこなすのは非常に大きなリスクです。将来的な独立も視野に入れた経験やスキルを培うべきだと考えます。


転職するために必要なこと

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では、40代での転職に関する事例を見てみましょう。私はアトワジャパンで転職の支援をしていますが、今、コンサルタントという職種の案件が非常に増えています。それだけコンサルタントに対するニーズは高いものの、人によって市場価値は大きく異なります。同じコンサルティングファーム出身であっても、年収が全然違うんですね。

何が違うのか。

どんなプロジェクトをやってきたかによって、コンサルタントの価値は決まります。例えば、有名な大学を出て、新卒でコンサルタントになった方。もちろん優秀ですが、自分の方向性を持たないまま、いろんな案件に参画します。自動車業界のプロジェクト、医薬業界のプロジェクトなど、会社の都合に合わせて様々な分野の案件を経験していきます。

すると「コンサルタントとして15年やりました。ただ専門分野はありません」という状態になります。これでは、なかなか転職市場での価値というのは上がりづらいのです。

一方で、明確に「私は自動車業界をやりたいです」と定義し、自動車に関連したシステムの導入案件やマーケティング案件を集中的にこなすと、自動車関係の知見を持ったコンサルタントになることができます。転職市場で価値が高まり、高年収で転職することが可能です。

これはコンサルタントに限ったことではありません。過去、終身雇用が前提だった時代には、会社にしがみついていれば何とかなりました。しかし、もしかしたら会社がなくなるかもしれません。将来的にどんな仕事をやりたいか、その目標に合わせてどんな仕事を今、勝ち取っていくか。こういった観点は非常に大事になってきます。


価値提供できる人材になる

重要なのは、安定雇用が維持されている意識をなくすことだと思います。そうすることによって、働いてる方々もより優秀な人材になろうと努力をしますし、マーケットの中で切磋琢磨し、価値提供のできる人材になることができます。

そうすれば、雇用主と労働者という上下関係ではなく、対等な関係を築くことにもつながります。退職後には、企業と個人の関係として、外部委託として正当な評価を受けることも可能かもしれません。実際に私も以前勤めている会社とお仕事をさせていただくこともあります。価値提供ができる人材になることは、起業の有無に関わらず、非常に重要なことです。


起業で成功できるのか

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さて、先ほどは転職という選択肢を見てきました。次に起業について考えてみましょう。
中には起業に対して、不安を感じる方もいるかもしれません。やっぱり大手に負けてしまうのでは、と考えている方も多いと思います。しかし今は、中小企業やスタートアップでも、フリーランスや業務委託を活用することで、大手並みのアウトプットを提供することが可能になってます。

実は、このフリーランスや業務委託を活用することで、大手並みのアウトプットをつくるのは、当社も力を入れているポイントです。

アトワジャパンではクレドルというセルフコーチングのアプリケーションを開発しています。これを作るにあたって社会人インターンも積極的に起用しています。

新卒は未経験が基本なものの、既卒において新しい分野へのチャレンジは容易ではありません。当社は新たなチャレンジをする社会人をサポートしようと、クレドルを開発するにあたって、主要なメンバーを未経験のインターンを中心に集めました。

たとえば、Webマーケター志望のインターン生に対しては、会社として外部講師を招集して指導。プロから身に付けたスキルや知識をもとに、Webマーケティングの企画運用を主体的に進めていただいています。彼らにとっては実務を通したキャリアアップにつながるうえ、我々としても、リソースを確保しながら、大手並みの品質を維持しながら製品開発ができています。

当社の場合は未来の若者への投資をビジョンとしているため特殊な例ではありますが、他のベンチャーや中小企業の場合だと、ランサーズやクラウドワークス、ココナラといたスキルシェアリングを活用して、社外のプロフェッショナルを活用した事業を展開する例も増えています。自社で活用できるリソースがなくても、起業が成功する確率はかなり高まっていると考えています。これは将来的にフリーランスの道を選ぶ方にとっても、嬉しい社会の変化と言えるでしょう。


ベンチャー企業が提供できる価値

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とはいえ、ベンチャー企業は、大手に比べると経営基盤が安定していないのも事実です。事業を拡大しようとしても、投資家や求職者などのステークホルダーからの支持を集めるのは容易ではないでしょう。起業に踏み切ることに、躊躇してしまう方もいらっしゃると思います。

この悩みについて、私自身、つまりアトワジャパンとしてどう捉えているのかご説明します。私は、大きな看板・ブランドがない我々のようなベンチャー企業にとって、会社が従業員に提供できるものは、「成長機会」と「ビジョン」しかないと考えています。「会社に何があっても、自分の力で食べていく能力を身につけてもらいたい」と常々チームメンバーに伝えています。

働き方も、社員として働く以外に業務委託やインターンなど複数の選択肢を整えることで、より柔軟になるように努めています。メンバーとの関係性も、風通しをよくして、個人と企業が対等に交渉できる環境づくりを進めています。これにより、個人のレベルも上げつつ、組織として多くのことを達成することができると考えています。

では、また次回、お楽しみください。


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