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その涙の色は何色なんだろう。

親父・ハゲム(珍しい名前、漢字は励。)は、正真正銘のキャンパーかも
しれない。

キャンパー・ハゲム!

だって家には、水道、電気、ガスが通っていないのに
10年ぐらい暮らしている。

嘘だろ。
大丈夫か。
気でも狂ったか。

ハゲムは、兵庫県丹波市の谷川というところに住んでいる。
元土木設計士なだけに重宝されるのか、77才になった今でも
警備員として暮らしている。

ここは、僕と兄サトシと母と父とで暮らした小学校までの6年間のいい思い出のある場所。
35年前の僕がみた景色が変わらず残っている、いわゆる「ど田舎」だから、仕事がない。

その中で、
だって家には、水道、電気、ガスが通っていないのに
10年ぐらい暮らしている!!!

嘘だろ。
大丈夫か。
気でも狂ったか。

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今回は、このコロナ禍の中、親父ハゲムから1通の手紙がきた。
仕事が途絶えたから食糧を送ってくれと。

コロナ禍で、会いにいくのをためらったが、
気をつけて丹波に向かった。

役場に行って、10万円支給の申請と今後の作戦を伝えようと
向い、庭を耕し親父の食糧問題を解決しようと考えた。

ハゲムは、植物大好きで、盆栽も自由自在。100株ぐらい庭に
あったし、畑仕事もできる設計士だったから、野菜を育てるに違いないので、畑ができるまでやってやろうと考えた。

ほんまにできるんかーい。

大阪から1時間半の工程は、体感長く。その谷川っていうところの
実家に到着した。

外から「ハゲさーん」(ハゲムだから呼び名は、ハゲさん笑)
   「親父ー!」
   「おとー!」
   「ハゲさーん!」と読んでみたが、いないっぽい。

でも窓があいている。

どこかに行ったのか。。
そのうち帰ってくるだろうと思って、庭の砂利をぬぐい始めた。

畑にするにしても、まず砂利をとって、耕さないといけない。
人力でもいけそうで、砂利から20センチぐらいで
茶色土が出てきた。

昔、庭があって、畑もしていた庭だったのでその土が残っているのを
確認した。

そう思って、掘って、1時間ぐらいしただろうか。
ついに、とうとう、親父ハゲムが現れた!
ドキドキ!

事前に手紙で行くと伝えていたので、
待ってたみたい。
頑固じじいなので、偏屈になっていないかと考えすぎていたが
元気だ。

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去年、肺炎で入院したので心配していました。

親父を撮るのに36枚のフィルムがどんどんなくなっていく。

ハゲムもどんどん撮影させてくれる。

今回初めてこれからのことを話せたと思った。
ハゲムからも稚拙なプランを聞いたが、
僕のプランを実行しようと伝えた。

庭で少し耕しながら、ごはんを食べたんだ。

初めてじゃないのか、こんな感情的にならずに
喋れたんわ!


そして、次の約束をして帰路についた。

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今、帰ってnoteを書いている。

ほっとしていると。
ラジオから音楽が流れてきた。

そしたら、やっぱり涙が出てきた。

だいたいいつも丹波に帰ると涙が出てるんだ。
なぜ、涙が出るのか。

親父が寂しい思いをしてきた。
僕も兄も寂しい思いをしてきた。
だいたい離れて暮らしてきた家族。
家族全員、さびしい思いをしてきたと思っていたんだ。

今までただ指をくわえて、どうしようもないと
思い過ごしてきたんだ。

ほんまにそうなのだろうか。

今回は、
再度、そこに挑んでみたいと思ったんだ。

だから、今日の涙は、
悲しみの涙とちょっと種類が違う。

ちょっと決意したんだ。
生きる。

つづく。

※公開後一部写真を追加いたしました。

サポートいただけたら、「サトシとヤスシ」写真展の準備や取材の費用に使う予定です。