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【☕️詩】レテビシィ・パルマレア

泥のように永久の腐敗をみせたコーヒーカップにマドラー混ぜて 無意識が【手】の静止を感知するまで続いた

言い換えると私は腐敗する【時間と共に――の】コーヒーカップの中身が泥化するのをなるべく遅らせる為に 混ぜ続けていた

諸君らは好物の摂取が寝ても覚めても権利と可能性があると信じるだろうが 現に私に残されて糖度の上昇に伴って腐敗を免れた一杯のコーヒーを混ぜ続ける【真鍮製のマドラーだからその点は心配いらない】

しかしそれとて 問題は気力云々であり この【混ぜる】とは別に肉体に労働に対する対価としての栄養を与え稼働を促進せねばならない

知っての通り裏マーケットのゴミ箱のフタに付着した判別のつかぬ生ゴミと違い【現に】私の手によって腐敗を【かろうじて――ではあるが】免れて 二律背反とはまさに――と 実際このコーヒーを啜れば多少の眠気覚ましにはなろうか

がしかしテセウスの船
私がコーヒーをかような矮小な理由で啜ってその絶対容量を減らし 監視がないのをいいことに【愚かにも継ぎ足す】――を実行すれば【仮に】減少自体は避けられるが 揮発とは違う手段の……やはり

従って私は使用人すら雇わず【時代にそぐわないが】自力でコーヒーを【混ぜること】を続けるが これは懐古主義の産物ではなく 再三述べた通り【泥化】さえ防げれば――の先に満足があるかはさておき

郵便配達員の怪訝な眼すら私には すなわち……ではないが明け方に混ぜ続けたコーヒーの香りを嗅ぐのが私にとっての――【泥化すら免れているので】生きる道理だと私は【レテビシィ・パルマレア】として

すっかり削れた真鍮製マドラーに密かに慈しみを抱いた

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