壁そうじ【詩】
やることがないのでブラシとバケツを買ってきました
生まれてこのかた、床はともかく壁なんて
どんなふうになるのか、見ものです
【みず】に浸して せっせと まんべんなく
……今日は疲れました。もうやめます
次は、高いところをやります
昨日よりずっと難儀です
椅子に乗って つまさき立ちで ギリギリの
……怖いです、足も震えてました
地下室の壁も掃除しましょう
暗くてさみしい、ひとりぼっちの
換気が必要な場所でバタバタ汗をかくの、ダメですね
先生が掃除はもうやめなさいと言ってきました
どうして? 嬉しくなるとおもって頑張ってたのに
ブラシとバケツは捨てられました
あれから私は、街で掃除用具をみるたび、指をくわえて路地裏に溶けていくのです
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