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【クソ短編】トーストと私

トーストを咥えイケメンと接触し転校生として再会を果たすのが目標だった私は、気の迷いで食パンの品質向上に着手した。

親に繰り返し土下座をし近所の空き地を購入。将来必ずお金は返すと口約束をし、心の中で舌を出した。

農家の一人息子である井ノ原さんの指示により、的確に小麦は育った。最近彼の距離感が近い気がするが、お前はイケメンではないと深夜にダイレクトメッセージを送りつけた。

翌日から畑にゴミが目立ったが、知識は充足しているので問題ない。私は再度土下座をし監視カメラの購入に至った。

早朝から畑の手入れをしていると目元の鋭いセンター分けの同年代と思われる男性が道を尋ねてきた。私の通う学校の名を出したのでオススメの通学路(猫が多いという観点)を教えてあげた。

朝礼の後、担任が転校生を紹介をしてきたので私は心の中で『あ〜❗️ あの時の❗️』と呟いた。彼こと和島とは今でもたまに遊ぶ仲だ。ちなみに結局偏愛を注いできた井ノ原さんと結婚。もちろん親には土下座した。



『問題は……ここからなんです……』

――新婚生活も一段落した頃、彼女はふと実家の監視カメラの存在を思い出した。当時としては高性能な代物で、遠隔でリアルタイムの映像を見られるのはもちろん、遡って一ヵ月、保存された映像を振り返る事もできる。

ホームベーカリーの食パンが焼けるまでの間、実家の母に任せている小麦畑の様子を飛ばし飛ばしで見ていた。

『……え❓』

深夜帯に毎日、真正面からカメラを見つめる顔が映っていた。彼女の話によると、学生時代に転校してきた同級生らしい。

『それで私……あんな事しちゃいけんよ――って電話で注意したんです。そしたら止めてくれました』

でも――と、彼女は続けた。

『次の日……旦那を送り出して私はゴミ捨てしたんですよね。時間が押していたのでトーストを咥えたまま……。そしたら件の同級生、和島くんとぶつかったんです。当たり前ですが、親と旦那双方に土下座をし、和島くんと結婚しました。人生って、たくさんの気の迷いがありますよね――』

今回の【教えて❗️ あなたのクズエピソード❗️】はいかがでしたか? 次回は被害者の本音に迫る企画を予定して――


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