投票したい人がいないと思ったら-いい議員の探し方-

1.「いい議員」って何だろう

皆さんは、「この人は信頼できるな」と思う議員はいらっしゃいますか?

地元出身の議員さんと知り合いだとか、テレビによく取り上げられているような議員さんであれば、人となりがなんとなくわかるので、応援したい、という気持ちになる人もいるかもしれません。でもテレビで頻繁に取り上げられるような議員は国会議員全体の一部です。大多数の日本人にとっては、国会議員ってすごく遠いのではないかと思います。

選挙の時に、与党の政権運営が乱暴だから、野党に投票する、野党は信用できないから与党に投票する、という方法ももちろんありです。でもわたしたちは、官僚時代から現在までリアルに国会議員の方々と接していてて、議員と言っても千差万別だ、ということを強く感じています。

今回は、一般の方がその議員の考え方や強みを知ることができる方法についてご紹介します。

与党、野党という区分けだけではなく、議員個人についても注目してみると、見える世界は変わってくると思います。

2.よくありそうな「いい議員」の勘違い

-国会でたくさん質問している
国会でたくさんの時間質問をしている議員はよく働くいい議員なのでしょうか。

私はこれには賛成しません。

国会で与党と野党がどれくらい質問する時間を持てるかは与野党の協議で決められています。麻生政権時代は「与党四割、野党六割」、第二次安倍政権では「与党二割、野党八割」の配分がされました(※)。
※安倍総理の与野党の質疑時間の配分見直し指示に関する質問主意書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a195015.htm

この方式に従うと、たくさん質問時間を割り当てられる野党議員がより評価されることになり、与党議員が評価されないことになります。

-質問主意書をたくさん出している
国会議員は国会で政府に対して質問をすることもできますが、それだけでなく、書面で政府に対して質問をする権限も法律で認められています。それが質問主意書です。
これを提出した回数が多いかどうかは、いい議員かどうかの判断に影響するのでしょうか。

私はこれにも賛成しません。

質問主意書には、「鋭いな」と思う質問もありますが、「ちょっとどうかな」と思うモノもたくさんあるからです。

悪名高い主意書をとしては、

総理公邸に幽霊が出るかどうかを政府にただしたモノ

直近五年間に大臣が「セクシー」という単語を使った事例について確認したモノ

があります。

中身の乏しい質問主意書は、国民の税金で賄われている公務員の仕事をいたずらに増やすだけでむしろ有害です。
中身を評価するならまだしも、質問主意書の数を評価することについては賛成できません。


‐その人の経歴が立派
経歴が立派な政治家が、良い政策を提案してくれるとは限りません。その政治家があなたと違う考え方の場合、あなたにとってはうれしくない政策を実現するかもしれないからです。

(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)

3.マニュフェストだけで投票先を決めることにはデメリットも

もしあなたが普段から個々の政党のスタンスをウォッチしていて、個別の政策に対する政党のスタンスの違いをはっきりと理解できているならそれもよいかもしれません。

でも、そうでない場合に、選挙のマニュフェストだけを見て決めようとするのはデメリットもあります。

その理由は、第10回:与野党の違い ~政策実現のためにできること、役割の違いを知る~で説明したように、

・マニフェストには、代表的な政策しか書いていない
・マニュフェストの公約は、抽象的な表現も多い
・マニフェストはあくまで選挙の時点の論点しか提示してくれない

からです。


4.いい政治家とは何だろう

実は与党議員でも野党議員でも、新しい問題を掘り起こして政府の政策を変えることはできます。選挙も近くなってきましたので、千正組が考える「いい政治家の探し方」をご紹介します。ご参考にしていただけると幸いです。

5.じぶんごとを特定する


まず一番最初にしてほしいことは、あなたの「じぶんごと」を特定することです。
もしあなたが、「政治に声が届かない」と感じているのなら、その理由はあなたの選んだ政治家の問題意識を知らず、更に選挙の後何やっているのかを知らないからです。 今回から、あなたの「じぶんごと」を改善してくれるために働いてくれる可能性が高い政治家を探しましょう。
あなたが普段生活している中で、こうだったらいいのに、と思うことはなんでしょうか。

・大学の学費が高すぎる
・PTA活動が大変すぎる
・職場がブラックすぎる
・ワンオペ育児がつらい
・年金が少なくて生活が苦しい

なんでもいいと思いますが、あなたがこうだったらいい、と思っている日常の問題を思い浮かべてみると「じぶんごと」が見えてくるのではないでしょうか。

6.自分の選挙区の候補を知る

そもそも自分の選挙区で誰が出ているのかわからないという人もいるかと思います。
安心してください。同じ東京23区でも違う選挙区だったりするので、大半の人は混乱しているハズです。
でも大丈夫です。「お住いの市区町村+町名 選挙区」でネット検索すれば、あなたの選挙区はすぐわかります。
選挙区がわかったらこういうサイトを見れば、誰があなたの選挙区にいるのか知ることができます。


7.ツイッターから候補者の考え方を知る

あなたの「じぶんごと」と候補者の関心ごとがマッチしているかはインターネットを使えば調べられることがあります。

例えばツイッターなんかは候補者は使っていることが多いです。

候補者の名前を検索すると、たいていツイッターがヒットします。

ツイッターにはアカウント名というものがあります。@以下の記載がそれです。

画像1

候補者のアカウント名がわかったらツイッターの以下のアイコンをクリックしてみましょう。

画像2

そして
「from:アカウント名 あなたのじぶんごと」(そのアカウントが発信した内容)か
「@アカウント名 あなたのじぶんごと」(そのアカウントが関係する内容)
で検索してみると、その人がどんなことに関心を持っているかがわかります。

例えば、以下のような感じです。

画像3


アカウントを入れた後のキーワードはいろいろためしてみることをおすすめします。
子育てに興味があるなら、「子育て」だけじゃなく「こども」「子供」「子ども」といった具合です。

8.候補者のHPから候補者の考え方を知る

たいていの候補者は自分のHPも持っています。

HPの中には政策集も当然乗せてありますので、その政策の中に皆さんのじぶんごとが書いてあるかどうかを確認することも大事でしょう。

特に現職の場合には、その人が国会でしっかり仕事をしていたのかを確認することも大事ですね。

現職の場合は、党○○委員長、○○大臣を歴任、なんてことが書いてあると立派な議員のように見えますが、特に注目してほしいのは「議連」「議員の会」「議員連盟」「○○の会」といった記載です。
これらは、議員連盟(議連)といって、議員個人がじぶんごとだと思っているテーマについて、政策をかんがえ、議連のメンバーが一丸となって政府に提案することを目的とする議員の集まりです。
所属する党をこえて与野党で組織する場合もあり、この議連の提案から予算が新しく作られたり、法改正が行われたりすることもあります。

議連に参加するかは、基本的にはその議員がその議連の課題を大事だと思っているかどうかで決まります。

ですので、皆さんがじぶんごとだと思っている政策に関係しそうな議連にその議員が所属しているようなら、皆さんと同じ問題意識をもって在任中から活動していたと考えてよいかと思います。

9.もう少し議員の考えを聞いてみたいという人は

ここまでで、ざっくりと議員の考えはわかったと思いますが、もっと詳しく知りたい方は是非、議員の演説会に顔を出してみてください。選挙期間中でもなければ、議員に会うなんて機会はなかなかないですし、あなたが知りたい問題について、もっと詳しい話を聞くことができるかもしれません。

10.投票した後は

投票して、はい、それでおわりだととてももったいないです。
なぜ、なら政策をつくる現場である霞が関・永田町では、選挙と選挙の間に、無数の政策についての意思決定が行われているからです。

選挙の時だけで、あとの任期(衆議院4年、参議院6年)を白紙委任してしまっては、せっかく特定した「じぶんごと」がどのように解決されていくのか、いかないのかが分からなくなってしまいます。
個別議員の活動を追い続けるのはとても大変ですが、普段から政策に関心を持っていることが、政府の政策をよくしていくことにつながります。

最近は身近な政策課題を市民の側からインターネットで提案して、その提案を受けた議員が行動を開始するような政策プラットフォーム(issues,
PoliPoli )も作られてきています。

こうしたサイトをきっかけに政策が動くこともあるので、選挙が終わった後も引き続きじぶんごとに関する政策のために政治家や官僚が動いてくれているのかを、ウォッチし続けることが必要です。また、地元の議員事務所を訪問して、困りごとを相談すると意外と話を聞いてくれます。議員に政策提案をしたい、という場合には第15回:政治家・官僚に刺さる説明の手法
を是非読んでから事務所訪問をしてください。どんな提案の仕方をすればあなたの「じぶんごと」を議員の「じぶんごと」として聞いてもらえるかのコツがわかると思います。


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