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第110回:2024最新版!政策提言の最重要文書「骨太の方針」の裏側を徹底解説!

1.「女性の所得向上」「医師偏在の改善」骨太方針2024のメッセージとは


骨太の方針(正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」と言います)が6月21日に閣議決定されました。骨太の方針は、すべての閣僚合意によって決定される政府最高レベルの意思決定である閣議決定によるものなので、骨太の方針はいわば、政府が国民に対して行う約束のようなものと考えてもらえればよいでしょう。

後述しますが、今回、発表された骨太方針では「女性の所得向上」「地域医療構想の対象範囲の拡大」「リ・スキリング強化」などが打ち出されています。医師の偏在対策として、「経済的インセンティブ」を盛り込むことも明記されました。骨太の方針の本文を読むと、日本の社会保障政策に影響力を持つ厚生労働省などがどのようなことを課題と見ていて、どのようなことが論点となっていきそうかを見通すことが出来ます。

 各府省は閣議決定の内容に拘束されるので、骨太の方針に記載された政策には、「それを実行しなければならない」という強いプレッシャーが生じます。書き込まれた内容の実現可能性は限りなく高いともいえます。

そのため、骨太の方針に、自らの意見を盛り込んでもらうことは、みなさん民間の提言者だけでなく、政治家や行政官僚にとっても重要なマイルストーンになります。それぞれのステークホルダーが、骨太の方針を目指して年間を通じて意見を戦わせあうわけです。特に、原案が発表されてから閣議決定されるまでの2週間余りは、目まぐるしく状況が動きます。

今回の記事では、骨太の方針がどのようなタイムラインで、どのような関係者の動きの中で決まるのか。その裏側を解説したうえで、つい最近発表された骨太方針2024の中身のなかで、特に今後の医療・介護・製薬・労働政策の動きを占ううえで重要な点について紹介・解説します。

 

2.骨太の方針とは


骨太の方針とは、経済財政諮問会議での議論をベースに作成される閣議決定文書です。その後の政府の政策の方針や予算配分の方針について記載しているもので、政府の閣議決定モノとしては最も重要なものの一つと言えます。

 骨太の方針を議論する経済財政諮問会議は、内閣府に設置され、

①内閣総理大臣の諮問(意見を求めること)に応じ
②経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その 他の経済財政政策に関する重要事項について調査審議し
③内閣総理大臣に意見を述べること

をその職務としています。(内閣府設置法第19条

 ちょっと、難しいかもしれませんが、要は、経済財政諮問会議は、法律上は「単に調査し、意見を述べるだけで、政策を決定することはできない」とされています。

しかし実態は、経済財政諮問会議の議論を踏まえて骨太の方針は作成され、最終的に閣議決定されています。そのため、経済財政諮問会議は、実質的に政策を決定する重要な場になっているといえます。

 

3.骨太の方針の読み方


骨太の方針の章立てとしては、おおむね以下のような形となっています。

■ 第1章 

第2章以降の経済財政政策につながる現状の日本経済・世界経済の分析を行います。

■ 第2章

新規に開始したり、更に力を入れたりする経済政策(霞が関用語では「充実ダマ」と呼ばれます。)について言及します。第1章で言及した政府の方向性を詳細化し、個別政策を列挙。「年末までに、検討し、結論を得る」といったような記載を盛り込み、期限を切ることもあります。近年こちらの記載は成長戦略(新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画)と重なることが多くなっています。

■ 第3章

財政政策(霞が関用語では「財政再建ダマ」と呼ばれます。)について記載します。第2章が政策を充実させるための記載だとすると、第3章は既存の政策を改革すること(支出を減らすこと)に主眼を置いたものが多いです。ざっくりとしたイメージでいうと、児童手当の拡充のような財政支出等によりサービスを拡充するような内容は第2章に入り、社会保障の持続可能性のための負担導入等、予算の効率的な使い方に重点を置くものが第3章に入るというイメージです。

ここまでで、骨太の方針の政府内での位置づけや、文書の構成などご理解いただけたと思います。ここからは骨太の方針の策定プロセスを紐解きながら、骨太の方針への政策の記載を目指す皆さんがどのように動いていけばよいかを解説していきます。そのうえで、今回の骨太の方針2024のポイントについて解説していきます。


 (執筆:西川貴清、監修:千正康裕)

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