「『ごめんなさい』って言っちゃいなさい。」
子供の頃、何となく家族に違和感を感じていた。
やることなすこと、全てに反対されていた氣がする。
おばあちゃんだけは静かに見守っていてくれた。
ありがとう。
決して恵まれていないわけではなかった。金銭的に困ったことは一度もなかった。家もあった。庭もあった。自家用車もあった。自転車もあった。勉強机もあった。テレビもあった。だから、感謝はしている。なのに幸せだと思えなかった。ずっとひとりぼっちだった氣がする。
急にフラッシュバックする過去がある。
「これでもか。これでもわからないか。」
と、小学校低学年の頃、父に殴られたことがあった。
説明もなく、急に手が挙がり、ただただ怖かった。泣いていた。
「これでもか。これでもわからないか。」
と、続く。
「『ごめんなさい』って言っちゃいなさい。」
と、おばあちゃんが言った。
けれど、自分がいったいどんな悪いことをしたというのか。それがわからないから「ごめんなさい」と言えない。
ただ、殴られて、殴られて。
怖くて、机の下に隠れたけれど、まだ殴られた。
怖くてずっと泣いていた。
謝る理由がわからぬまま、ただ痛いのをやめてほしいから、
「ごめんなさい」
と言った。
いったい何をしたのだろうか。
いったい何が悪かったのだろうか。
なぜ殴られなければならなかったのだろうか。
今でもわからない。
ただ殴られて怖くて痛かったことだけは記憶に残っている。
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