スナフキンのサンダル ⑧ 〜 アロハの青年 〜
初めての海外ひとり旅で、予定していなかったカンボジアにやってきた。アンコールワットは有名だが、当時の僕は、残念ながら寺院や遺跡にほとんど興味がなかった。
今になって必死に思い出しているのだが、アユタヤで見た景色とカンボジアでの記憶がごちゃ混ぜになっており、アンコールの遺跡など、ほとんど思い出せない。
しかし、シェムリアップでもレンタルサイクルを借りて、走り回った。当時は、
「ジャングルの中に地雷が残っているから、気をつけろ‼︎」
と注意を受けたのを覚えている。
あと、野良犬が異常に多く、そこら辺にいて、何度も犬に追いかけられた。
もし噛まれると狂犬病にかかって死ぬという噂があり、とても怖い思いをさせられた。
また、カンボジアの屋台はタイに比べて、かなり貧弱な造りで、ガスがなく、薪に火を焚べて鳥を丸焼きにしている所などがあった。
シェムリアップの町に3日間滞在して、バンコクに戻ることにした。帰りはバンコクまで直行するという乗り合いバスを見つけた。
カンボジアからタイの国境を越えると、すぐさま道が快適になった。途中に何度か、食堂のような所に停車し、休憩をする。
日本の田舎にあるドライブインのような、駐車場がだだっ広い食堂と土産店。そこで瓶のコーラを見つけたので買うことにした。
「テイクアウト?」
とアロハシャツを着た店員が聞いてきた。僕は
「イエス」
と答えて、待っていた。そのアロハの青年はビニール袋を取り出し、なんと手で掴んだ氷をその袋に入れ、瓶に入っているコーラもその中にドボドボと注ぎ込んだ。
さらに、濡れた手でストローをさして、
「ヒア ユー アー!」
とにっこり笑い、僕にコーラの入ったビニール袋を手渡した。こちらでは瓶が貴重であったのだろうか。
僕はアロハの彼が見ていない所で、一口も飲まずに買ったばかりのそのコーラをゴミ箱に捨てた。
次からはその場でコーラを飲んで、瓶を返すことにしようと心から思った。
続
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?