【コラム】転職ランナー ⑧ 〜 みかん狩りバイト 上巻 〜
社長が解散を告げ、ほとんどの仲間は実家に帰った。そんな中、愛媛県の宇和島市でミカンを収穫する季節バイトに行くという強者がいた。
彼はケンと呼ばれ、みんなから慕われている先輩で、今までいろんな所で季節バイトをやってきたという。
そして彼は電話1本で翌週からの仕事を決めてしまった。
「来週からだけど、今年もやっとる?? な、何、ええっ?人が足りてない、、」
ケンさんは僕の方を見た。僕は少し悩みながらもうなずいてしまった。すると彼は農家の人に
「わかった。もう1人連れて行くわ、じゃあ来週ね」
呆気にとられてる僕に、ケンさんが
「三度の飯と風呂と布団がついて、現金で30万もらえる」
と魅力的な内容を伝えてきた。ラフティングの給料と比べれば破格な値段だ。
空家を管理している大家さんに
「来年の4月に、また戻ってくるけん」
と伝え、部屋を片付けた。
そして愛媛へ行く準備をしていたら、1週間はあっという間に過ぎた。
愛媛県宇和島市の海を見渡す一帯に、みかん農家の集落がある。僕はケンさんが泊まる隣の家に、お世話になった。
日の出と共に、バケツのようなカゴを背負い、ひたすら、みかんを採る。
「ほーなん、カゴいっぱいやけんねー」
とカゴが一杯になれば、それをコンテナに移し換える。
そのコンテナが満杯になったら軽トラに積み上げる。
この作業を日が暮れるまで繰り返し、山積みの軽トラで家に帰る。
最初の頃は老夫婦と3人だったのが、数日して東京から若い男女がやってきて5人になり、とてもにぎやかになった。
ケンさんの所にも東京から何人か来ていた。聞くところによると宇和島市とフロムエーがコラボをして、観光バスで全員が一緒にやってきたらしい。農家のお父さんから
「あの子らには、自分が貰うお金の話をしちゃいかんよ」
と僕らは口止めされていた。
東京から来た2人は力仕事に慣れておらず、みかんをカゴからコンテナに入れることは出来るが、コンテナを軽トラに積み上げることが出来なかった。
続
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