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ギザギザハートの陸上部 Ⅲ [出席日数]

今から25年程前の話である。高校卒業時に就職先が少なくなっており、大学への進路を選択した同級生は、

「4年したら、景気が良くなってるかも」

と甘い期待を抱いていた。しかし、4年後さらに厳しい状況に陥ったのは、歴史が証明している。

出席日数

前回は赤点のことを書いたが、今回は出席日数について書こうと思う。授業数の3分の2以上の出席が進級するには必要と言われていた。

ほぼ皆勤賞の自分にとっては関係ないことだが、バイトを頑張っている奴等にとっては際どい生徒もいた。

福田という僕の隣の中学からきた男がいた。彼はバイトを掛け持ちして、よく授業も休んでいた。

ある日、彼が真っ青な顔をして

「タク、なんぼならお金借してくれる?」

と聞いてきた。どういう状況なん??と彼の話を聞いてやった。

福田は家の近くに停めてあったバイクを盗んだ。長期間使って無かったので、バレないと思ったという。この間、彼が、

「これカッコええやろ〜」

と学校に乗ってきて、自慢していたあのバイクは盗難車だったのだ。

さらにそのバイクの持ち主が、実はヤクザだったらしく、福田は今、追い込みをかけられているという、、、

残念な友達を持った自分の運の悪さに、溜め息を吐きながら、

「ふぅー、2万なら、なんとかできる」

と、いつ返ってくるか分からない、なけなしの金をはたいた。さらに福田はありとあらゆる友達に声を掛けて金を借りまくった。

しかし、80万の弁償金には届かず、大阪へ出稼ぎに行くことになる。彼は西成のドヤ街のような所で長期間働いたらしい。

10月に出発して、帰ってきたのが2月であった。さすがにクラスの誰もが、

「福田は落第やな」

と口を揃えていった。10月になるまでもヤツは、結構サボって授業を飛ばしていた。

4月になり新学年の始まりである。新しい担任を迎え、教室も新しくなったが、なんと福田が隣に座っているではないか。

「おまえ、なんで進学できたん?」

と聞けば、よく分からない補講を1日だけやって、先生に大阪のお土産を配ったら許してくれたと言う。

これが2年の新学期の話である。秩序の崩壊は言うまでもなく、学校に行っても行かなくても進学出来ると、身も蓋もないことが証明された。

因みにこの福田について、書いた記事があるのでリンクを貼っておく🔗

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