オオカミ村滞在記 ③ 〜 古道作り 後編 〜
「サウナ小屋を作りたい」
これが東吉野村に移住した目的であると言い回っていたが、どこに作ろうかと思案していたら、3ヶ月が過ぎていた。
小川地区から古道作りをしていて、林道武木線の足ノ郷峠を越えると川上村まで出た。しかし、それは登山を思わせる激坂の上りと下りが多く身体への負担が大きい。
試行錯誤を繰り返し、小村(おむら)のわらび園から三尾にかけて、山の中腹になだらかな道があるのが分かった。時間があればクワを持って崩れた道を直しながら何日も掛けて道作りを進めた。
何度も迷いながら、三尾の集落までたどり着いた。そこに蔵心寺というお寺があり、その上を登山道が通っている。
こちらも最初が勾配の急な坂道になるが、山の中腹は、ほとんどが緩やかな道である。
東吉野村の村史に「小川街道」は小、三尾、狭戸、大豆生、麦谷を経て、地蔵峠を越え、川上村の瀬戸に至る。と書かれている。
この小川、小(おむら)、三尾の部分が開通した訳だ。恐らくだが、アスファルトの道が出来るまで、人は、この道を歩いていたと思われる、、、しらんけど。
そうこうしていると4月になり、春の日差しが日を追うごとに強くなってきた。山道に落ちた枝を拾っては捨てる作業でも汗ばむ様になる。
移住者仲間と地元の若者で一緒に飲む機会が重なった。移住コーディネータのOさんは10年くらいこの村を見てきたが、
「地元の若者とこんな感じで交流するのは初めてだ」
と言っていた。そんな飲み会を繰り返す内に仲良くなった地元土建屋の息子さんが、
「仕事探しとんやったら、ウチに来たらええやん」
と言ってくれた。そして僕は
「週に2回、火曜と水曜だけでもいいですか?」
と答えた。すかさず、土建屋さんの専務をしている息子は
「いいでしょう!」
とこころよく受け入れてくれた。
今日はその土建屋さんの現場で働いて、家でシャワーを浴びビール片手にこれを書いている。夕日がまだ高く、風が涼しい。
とりあえず今日もアントニオの言葉で筆を置くことにする。
「道、この道はどうなるものか、行けばわかるさ、迷わず行けよ。ありがとう!」
続
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