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兼任は是か非か?

アルフレッド・スローンは、数十年間のゼネラルモーターズ社での経験を、こう語っている。「経営管理(マネジメント)の成否は、集権化と分権化との調和にかかっている」と。つまり、即応性とテコ作用の最善の組み合わせを求めてバランスを取る行為がカギだともいえる。
「『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』 第3部 チームの中のチーム」より

ミドルマネジャーのための不朽の教科書と言える「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」を元に、マネジメント/リーダーシップを考えていく連続投稿シリーズ第12回目です。過去分は以下のマガジンをご覧ください。

使命中心か機能別か?

組織やチームの規模が大きくなると頭を悩ますのがチーム編成です。この時、どういう基準でチームを編成するか大きく2つのがあります。

1つは「使命中心編成」です。事業で言えば、東日本事業部や、西日本事業部と言った形で、果たすべき使命の単位で完結できるように組織を分けるやり方です。分権型マネジメントだと言えるでしょう。

もう1つは「機能別編成」です。事業で言えば、営業、製造など機能ごとに組織を分けるやり方です。意思決定は各個別の調整も中央で行うことになるので、集権型と言えるでしょう。

本文の例で挙げられた朝食工場を例にすると、それぞれ以下のようなイメージになります。本書から図を引用します。

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それぞれメリット/デメリットは自明なのですが、敢えて言語化してみると以下の通りです。

■使命中心方式
▼メリット
・市場や顧客の変化に迅速かつ最適な対応ができる
・その部門内で考えると、チーム運営がやりやすい
▼デメリット
・オペレーションや資源配置が部分最適になる
・各個別機能の知恵/ノウハウが集約しにくい

■機能別方式
▼メリット
・オペレーションや資源配置を全体最適で判断できる
・規模の経済や専門知識のテコ作用を最大化できる
・全体の優先順位に応じた資源の調整がしやすい
▼デメリット
・全体を取りまとめる管理機能の運用が非常に難しい
・市場や顧客の変化に迅速かつ最適な対応がしにくい

答えはマトリックス型兼任

「組織は使命中心で設計すべきか、機能別ですべきか―?」この問題に対して著者のグローブ氏はこう回答しています。

「共通の事業目的を持つすべての大組織は、最後にはハイブリッド組織形態に落ち着くことになる」

つまり、西日本事業部や東日本事業部と共に、全社横断の営業部や製造部が存在し、営業マンは事業部にも営業部にも兼任する形をとる、というイメージです。マトリックス型組織という表現の方がわかりやすいかもしれません。

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あいまいさへの許容

このマトリックス型組織の最大の懸念は、日常のマネジメント様式が曖昧になることです。二人の上司を持つことの面倒さは容易に想像できます。

この懸念に対して、部分の著者の考え方は非常に印象深かった箇所で、是非皆さんに共有したいと思い、少し長いですがそのまま引用します。

このシステムでは、マネジャーの日常の行動様式があいまいになる。たいていの人は、そんなあいまいさを嫌う。しかしながら、このシステムが、ハイブリッド組織を活動させるためには必要なのである。人はもっと単純明快なものを求めようとするだろうが、現実にはそんなものは存在しない。厳密な機能別編成組織は、概念的には明確だが、技術と製造(あるいは、社内の同種のグループ)を、ほんとうに顧客が望むものがわからないままに市場から引き離してしまいがちである。逆に、高度に使命中心型の組織は、明快にピシッと規定された所属関係と明確であいまいさのない目標を絶えず持つことはできるかもしれない。しかし、その結果生じる物事の分断状態は、非能率と、全体としての不充分な業績をもたらす。

特にこの記述が、マネジメントにはあいまいさを許容できる人格の成熟さと、そしてマネジメントとはアートであることを改めて思い起こさせます。

インテル社がハイブリッド組織になったのは、あいまいさが気に入っているからではない。他のこともすべて試みてはみたが、他のモデルでは、あいまいさこそ少ないものの、とにかくうまく機能しないのである。ハイブリッド組織とそれに付随する二重所属制度の原則は、民主主義と同じで、それ自体が偉大なわけではない。たまたま、組織化が必要などの事業においても、それらが最善の方法であるにすぎない。

著者も本書に触れていますが、チャーチルのこの言葉へのオマージュのようです。

これまでも多くの政治体制が試みられてきたし、またこれからも過ちと悲哀にみちたこの世界中で試みられていくだろう。民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にも出来ない。実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。―ウィンストン・チャーチル

結局リーダーは、ビジョンを示す存在でありながらも、超リアリストであるべきだと理解しています。賛否が問われる策であったとしても、今起こっている問題を少しでも解決できるのであれば、それを堂々と駆使すべきだと。ただそのためには、コンマ誤差で絶妙な調整をし続ける精神的持久力がなければならないということなのでしょう。

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以上、書籍「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」から、組織設計の現実論について考えてみました。

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