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もっと早く出会いたかった本 「組織にいながら、自由に働く。」

COMEMOでこの本を永吉さんが紹介しているのをみて、とても惹かれたので購入、最後まで読みました。

もっと早く、自分が組織を離れる前に、この本と出会いたかった。

著者の仲山さんと面識はないのですが、出身地(北海道)、大学在学中に留年して司法試験受けたものの諦めて就職、という点を含め、共通点が多い、というか、留年してまで司法試験受けたけど結局会社に入った、という共通点だけで十分シンパシー感じてしまいます。他になかなかそういう人って自分の周りにいないので。

もちろん、著者とは勤めた会社も違うし、擬似的に(無期限出向という形で)転職的な働き方はしたものの、正式な転職はしたことがないままに組織を離れるなど、自分とはキャリアは大きく異なるのですが、書かれていることはとっても納得。自分の場合はこうだったな、これが当てはまるな、ということがいっぱい。

本書では触れられていないけれど関係するかな、と思ったことの一つは、個人の資質、強みを測る「ストレングスファインダー」の結果との関連性。自分の場合は、34の資質のうち「競争性」が最も低く「着想」が最も高いのですが、これが本書で紹介され、著者も当てはまるという「うろうろアリ」タイプの姿と重なります。また、「目標達成型」ではなくゴールやプロセスを計画せず流れに任せていく「展開型」というのも、「着想」に次いで「適応性」が2番目にくる自分にはとてもしっくりきます。

自分が組織にいるころからの仕事のモットーとして「公私混"合"」をスローガンとしていたのですが、これが本書でいう「複数の立場の使い分け」「一見関連のない複業が、すべてつながっているようにする」という話と重なるように思いました。

また、著者はご自分の仕事を「お客さんと遊ぶ」と定義されているのですが、私も10年ほど前に自分の本業とは何だろうと考えた、というか悩んだ末に「前向きな夢を追いかける人の、夢の実現のお手伝い」と定義したのですが、その後、異業種他社への長期出向中も、独立した今も含めてこの定義に当てはまっていて、見直す必要はまだなさそうです。今の自分の会社の創業の理念のベースにも、この定義があります。

ただ、どんな仕事をしているのか、と言われて説明に四苦八苦するのはわたしも同じ。かつての所属組織を手がかりに理解してくれようとする方も多いのですが、それだとミスリードしてしまうなぁ、と思うことが多いのです。長らく出向していた会社のことで理解してもらうならまだしも、最初に入った(そして最後までいた)会社の一般的なイメージだと、今の自分がやっている仕事とはかなりかけ離れているので、提供価値の理解がかなりずれてしまうと思うので。

著者がさすがだと思うのは、自分の場合は手探りで暗闇の中をあちこちぶつかったり行きつ戻りつしながら歩んできたキャリアパスを、仲山さんは「加減乗除の法則」としてシンプルに提示されていること。自分がまだ組織にいる間にこの本に出会っていたら、もっと自信を持って、迷わずに歩めたかもしれないな、と思います。

本書のタイトルを見て、自分はすでに組織にいなくなってしまったんだよなぁ...と思っていたら、「おわりに」の中で、

「組織にいながら自由に働く」とは、結局のところ、「組織にいてもいなくても」自由に働ける人になるということです(これが言いたかった)。

とあって、安心したというか、そうだよなぁ、ととても共感しました。

自分の場合を考えてみても、組織に属していた時と今とで(細かい内容や立場の違いはともかく)やっている仕事の本質的な内容は何も変わっていない、というのが実感。だからこそ、本業の定義、つまり自分の提供価値が10年前と同じで違和感がないということでもあります。ということは、当時所属していた組織からすれば、害はないかもしれないけれど何の役にたっているか分からない、本書でも指摘されている「変人」だったんだ、ということを、改めてはっきりと理解しました(もちろん、うすうす感じてはいましたが(苦笑))。

もう一つ、「おわりに」に書かれていた若手の人とキャリアについて話すときに加減乗除のステージを共有することの効用、ともすると「加減」のステージを飛び越して「乗除」を目指してしまいがちな若手に具体的な今後のキャリアの進め方を示せる、というのはとても有意義だと思います。

実際、私も後輩から同様の相談を受けたことがあり、まだ時期尚早だと思うので先にしっかりと身につけるスキルを磨いてから、と話したことがあるのですが、その時にこの本が出ていたなら、より具体的に何をどうすればいいか、ということを明快に示してあげられたな、と(その後輩には、今からでもこの本を読むように勧めようかと思います)。

もちろん、すべての人がこのような働き方を志向しているわけではないでしょうし、そうであるべきだとも思いませんので、自分には関係ない、と感じる方は手に取らなくていい本と思います。ただ、マネージメントする立場の方であれば、部下がこうしたキャリア形成に向いていたりあるいはそれを望んでいたりする可能性もあるので、自分とは別のキャリアパスとして知っておくことはある程度必要なことではないかと思うし、若い方については、今後多かれ少なかれこうしたキャリアパスのエッセンスをすべての人が取り入れていく流れにあるように思うので、取り入れ方の度合いの多い少ないはあるにせよ、ご自身のキャリアに関係することとして一読しておく価値があると思います。

一方、このタイトルや表紙を見てピンときた方で、すでに組織にいる年数の長い方は、ご自分が今居るステージ(加減乗除)がどこかというチェックのために、まだ年数の短い方は、これからどのようにキャリア形成をしていけば良いのかというロードマップをイメージするテキストとして、利用価値の高い一冊であると思います。


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