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ソングライティング・ワークブック 第119週:ブルース形式の拡大(4)

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ヴァンプからR&Bバラード、または8小節ブルースへ

ド、ラ、レ、ソ、ド、ラ、レ、ソ...

ヴァンプについては何度か書いてきた。典型的なものの一つにベースラインが「「ド、ラ、レ、ソ、ド、ラ、レ、ソ」と繰り返すものがあるけれど、たとえばヴォードヴィルで「楽しいショーが始まるよ!」という雰囲気を作るのに使われた。ちなみにピアノ科の人ならDarius Milhaud(ダリウス・ミヨー)の『Scaramouche』を知っているだろうけれど、あれの1曲目は「ド、ラ、レ、ソ」のヴァンプが使われている。これは実際舞台のために書かれた(モリエール喜劇の翻案だったらしい)音楽だ。

でも、この「ド、ラ、レ、ソ」のベースパターンをゆっくり演奏してみたらどうだろう?と、誰かが思いついたのだろう。なんかリラックスしていい感じじゃないか?と。

1949年のRuth Brownが歌う『So Long』は、後のR&Bの感じがかなり出ている。

ド、ミ、ファ、ファ#

Glenn Millerの1939年ヒット『Little Brown Jug(茶色の小瓶)』(1869年にJoseph Eastburn Winnerによって書かれた酒の歌)のイントロのような「ド、ミ、ファ、ファ#、ソ…」というようなヴァンプもある。

これをゆっくり演奏して、最初の「ド、ミ、ファ、ファ#、」にコードを付けるとすれば、以下の2通りに大別できる。大分色合いが変わる。

もっとも前者の2つ目のコードは転回形を使わず、単にC7(Cメジャーなら)というのが多いようだ。少し例を挙げる。

『Need Your Love So Bad』(Fleetwood Macのヴァージョンが有名)では、イントロに「ド、ラ、レ、ソ」を使っている。

Nobody's Business

(Verse)
There ain't nothin' I can do nor nothin' I can say, that folks don't criticize me
But I'm gonna do just as I want to anyway, I don't care if they all despise me

(Chorus)

I'd rather my man would hit me, than to jump right up and quit me 
T'ain't nobody's business if I do

I swear I won't call no copper, if I'm beat up by my papa
Tain't nobody's business if I do

Porter Grainger/Everett Robbins, "T'ain't Nobody's Biz-ness, If I Do"

Rihannaの『Nobody's Business』のタイトルはこの歌から来ているのではないかと思う。先日もGuardian紙で「'Domestic abuse isn’t your business? Yes it is’: the push for employers to do more to protect their staff」という見出しを見たけれど、DVというと時々に引き合いに出される歌だ。

これはCメジャーならC-E7-Fと行く後者のグループだ。最初の録音はAnna Meyersによるもの(1922年)。

Bessie Smithの方がよく知られてるかもしれない。

後にコーラスだけが歌われるようになる。Jimmy Witherspoonは誰もが「ああ、R&Bだ」という感じになっている(1949年)。Freddie Kingが1970年の録音。

こうして「8小節のブルース」が成立した。


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