価値あるものは景気が悪くても買われる #新しい経済学
最近ある物価や景気に関する本を読んだのだが、どうも腑に落ちないことがある。
物価を考えるときに次のような理論がある。
貨幣の供給量を二倍にすると、決済サービスの供給もそれに比例して二倍になります。供給が二倍なので決済サービスの魅力はその分、低下します。これは貨幣の魅力の低下に他ならないので、物価は上昇します。最初と最後をつなげると、貨幣の供給量を増やすとインフレになるということなので、多くの人が確かにそうだなと納得できる理屈ができあがります。実際、この理屈は物価変動の説明として、一六世紀から今日に至るまで広く信じられています(渡辺努『物価とは何か』)
つまり、貨幣に対する需給が物価を決めるということだ。
たしかに、それで説明できる部分もあるかと思うが、それが本質ではないのではと思う。
人々の経済行動は複雑すぎるし、それがさらに相互作用しているので理論で割り切ることはできないが、本質的な大筋の考え方はできると思う。
私がいいたいのは、簡単な基本の3原則だ。
①お金を払うことの本質(買い手の状況)
お金を使うときに何を気にするか?
それは人の状況によって異なる。
それは、次の3点によって決まる。
1.そのお金を手に入れるためにどれくらいの労力を使ったか
コンビニバイトで、1日5000円を稼ぎ月に20日働き、10万円を稼いでいる人にとって、1万円の商品は高い。相当な効用が見込まれないとそれは買わないだろう。
一方で、2億円の資産があり、年間運用益で1000万円の収入がある人にとって、1万円など安いものなので、あまり吟味せず少し興味を持てば購入するかもしれない。
2.今後、どれくらいの労力で、どれくらい稼げそうか
また、未来の収入に関する見通しも重要だ。
今は、月に10万円しか稼げなくても、スキルがたまり将来もっと稼げそうなら、多少現時点での懐は緩むだろう。
先の2億円保持者なら、将来も5%程度の収入を見込んでいれば、ゆるゆるになる。
3.今の資産状況
最後は資産状況だ。
10万円の月収しかなくても、1億円の資産があるなら、1万円程度の買い物に悩まないだろう。
②本当に価値あるものは買われる。
本当に価値があるものは買われる。
結局、本質的な価値が最重要。
洗濯機が誕生は、多くの人の生活を一変させた。
先の例で収入が低い人でも、それが本当に価値あるものなら購入する。現代でも、月収10万円でも頑張って貯金して、iPhoneは買うだろう。
また、買い替え需要や新しいニーズを満たす商品などは本質的といえる。
③本当に価値があるものとは、社会環境によって変化する
しかし、価値があるといわれるものも買う人や状況によって異なる。
iPhoneは何でもできる便利なものだが、農村で自給自足している人には役に立たないかもしれない。
また、今の緊迫した世界情勢で、仮に日本にも戦争の危機が出てくれば、米など生活必需品の需要が高まり、その価値が上がるといえる。
こういう状況だれば、プラダやグッチのバックなどの価値は下がる。そのようなシンボル的な消費は幻想程度が高い。物を運ぶだけなら、10円の紙袋で事足りるというのが本質だ。
結論
これら3つを検討すると、結局、本質的に生活をよくするものは価値があり買われるが、価値というのは、買い手や社会環境の状況によっても変化する、というのが基本となる。これだけでも複雑であるが、かなり変数は絞れたのではないか。
こう考えると、お金を市中にばら撒けば、景気がよくなるというのは幻想だとわかる。
それは一時しのぎであり、良い商品の登場や買い替え需要など本質的なものが生じていない。
筋トレをしていないのに、プロテインを飲んでいるようなものだ。
結局は本質的によい商品が生まれ続けるか、買い替え需要がないと、経済の起点である個人消費は生じない。
そういうのがなければ、人々は稼いだ金を貯金や投資に回すだろう。その貯金や投資が、新しい本質的価値を創出する企業に回るだけでなく、企業が本当にそうした商品を作れなければ意味がない。
前にも書いたが、結局、本質的価値がある商品を作れる人間が肝になる。
だから、ベーシックインカムのセーフティネットや、教育が必要なのだ。