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ツイッターで続出「著作権」大好き一番病

「我こそは著作権の第一理解者で〜す!」

三島由紀夫は、自称天皇主義者が一夜にして民主主義者になったという滑稽さ、「一番病」という病気で説明した。周りが天皇主義の空気だったら、「僕が一番の天皇主義者でーす!」と言う。

私は著作権についても、そういう空気を感じる。

ツイッターで著作権違反投稿に対して、優等生ぶってそれを指摘する行為をよく見た。

私が中国で生活を始めた2014年の頃、中国ではブランド品を始め、日本のマンガ・アニメなどの海賊版が蔓延っていた。ルイヴィトン、PRADA、シャネルなどの模倣品は至るところにあった。

私は職業柄に、アニメの著作権侵害には多少敏感である。日本のゲームなどのコンテンツを中国展開する際に、中国市場にあふれる海賊版ゲームの存在は痛い。

2020年の今は、デジタル領域においては、ほぼ海賊版は一層されたが、2012年頃は尾田栄一郎氏の「ワンピース」の海賊版は中国のApp Storeの上位100に10個くらいあったのではないか。

多くの人は、決まってこうした中国のあり方に対して、民度低いなあ、みたいな呆れた顔をする。

そして、その後は何もない。

しかし、私は当事者でもない人があれやこれやと批判することにこそ呆れてしまう。

たしかに、人の努力の成果を対価を払わずに使うのはけしからん。それに、もちろん、中国もベルヌ条約に縛られており法律で決まっているからダメというのは正しい。

しかし、

こういう著作権を侵害されていることに対して何もせず、ただ被害者ヅラして呆れているのは、思考停止。そもそも、「なぜ、ワンピースの絵を勝手に使って中国でゲームを作って販売したらだめなの?」という問いに「法律で決まっているだろう」というレベル以上の回答をできる人がどれほどいるのだろう。

違法なものを批判するのはいい。

だが、違法を批判するなら最低次の2点は抑えておいたほうがいい。

まず、侵害だとすれば誰の権利を侵害しているかの確認だ。映画などの大作になれば誰がどの部分の権利をもっているかの把握は難しい。そして、もう一つは本当に不当に権利を侵害しているのかということ。正式な権利を持っているか否かの判断も意外と難しい。

この辺りが把握できてから批判を開始すればいい。それもしないでただ「著作権侵害だ」というのは三島のいう一番病そのものだ。

そもそも権利者は、認知広がるなら放置しておいてもいいと思っていることもあるかもしれない。勝手に当事者でない人がどうこういって、息苦しい空気を醸し出さなくてもいい。

そしてさらに、もう少し視野を広げて考えたいところだ。

そもそも、日本人が著作権侵害について「知っている」のは、幼いころから人の真似はダメとかいう教育の延長で、それと新聞とかで見た「著作権侵害」についてを合わせて理解している程度だろう。

著作権法について学んでいるわけではないし、それがどのように実務や現場レベルで実行されているのかも知らない。

本当に理解するには、もっと深い考察が必要になる。

著作物とは何か?創作とは?創意とは?表現とは何か?個性とは何か?法律とは何か?法律に違反するとは?著作権法とは?国境を超えての法的問題は?法治国家とは?憲法とは?契約とは?社会契約とは?民主主義とは?キリスト教とは?

などなど根本を理解するには広い知見が求められる。さらに机上の空論だけでなく実務ではどうしているのか、過去の事例にはどのようなものがあるか、など幅広い。

人によっては教育や育った環境で「著作権」という概念や「その侵害」という概念を教わっていないので、しょうがない。日本人が憲法とは何か、法治主義とは何かをしっかり教わっていないので、それについて全く理解できずに法治国家、民主主義国家ズラしているのと何ら変わりはない。

著作権という概念を知ったかぶりし、それを知らない日本人は、まるでのび太くんがタメくんを苛めて優等生ぶっているだけだ。

そもそも著作権とは多くの著作者にインセンティブがあるような環境を整え、文化の発展を目指す目的がある。

著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。 引用:https://www.cric.or.jp/db/domestic/a1_index.html

しかし、法律は完璧なものではない。

少し考えてみれば、作品の作者だって、自分で全てゼロから創造したわけでなく、この世界のあらゆる存在、さらには作品としてまとめられた音楽、映画、アニメ、漫画、文学などからの影響を多いに受けて、作品を創造しているはずだ。オマージュやパロディなどは著作権の問題とかなり密接な関係がある。

著作権が誰のため、社会のどんな側面に対して存在しているのか、本質を理解していれば軽率な言動は取れないと思う。


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