語学(ビジネス)業界の本質的な未来予測〜AI教育と通訳はどう影響するか
語学業界は今後、どのような方向に進むのだろうか。
ここでいう語学業界とは、学習者の語学力を高めるサポートをサービスとして提供するものを広く指す。
語学力を高めるとは、外国語を“話せる、聞ける、読める、書ける”ようになること。
語学サービスは、価格やサポートの範囲など様々なニーズに応えるために多岐にわたる。
英語で言えば、いわゆるNOVAのような語学学校、レアジョブなどのオンライン英会話、SpeakBuddy、スタサプなどのアプリ、プログリット、イングリッシュカンパニーなどのコーチング(ちなみに中国語ならPaoChai)、サイマル・アカデミーなど通訳翻訳の学校、などなど様々である。
まず、語学サービス業界は、翻訳や通訳が、AIなどのテクノロジーでどれだけ進化するのかに、一定の影響を受けるだろう。
精度の高い翻訳や通訳が低価格で普及すれば、外国語学習者は一定数減るであろう。
まず、完璧な通訳・翻訳AIは可能なのか?いつできるのか?
それについては、「戸田奈津子ばりの通訳AI」ということで以前noteでまとめた。
つまり、今のAIは、シンボルグラウンディング問題を解決し、人間の「目」をかろうじて獲得できるかというようなレベルにある。
本当に人間と同じレベルで、様々な概念を運用するためには、耳や鼻、さらには身体をもって世界で経験を積まなくてはいけない。
それは、実際まだまだ先のように思える。
では、仮に2030年に、そのような通訳AIができたらどうだろう?
それについては、こちらで書いた。
つまり、
いくら通訳AIができても、自分で直接コミュニケーションした方がいい領域が残る。
もちろん、さまざまな言語を話す集団が多数存在するという前提のもとだ。(どこかの言語が世界のマジョリティに使われるようなことにならない場合)
通訳AIが出てきたとしても、
第二言語習得をする意義は、原理的に失われることはないのである。
そうなると、
語学サービスはどのような方向に発展していくか。
その本質は、語学力を高めることだ。
成長幅 = 学習効率 × 学習時間
なので、
①いかに学習効率を高めるか
②いかに時間を取るか
という2方向で競争が起きる。
学習効率を高めるという意味では、こちらにその5つのポイントを書いた。重要なのは、語学力の定義をどうするかということ、それまでに必要な学習項目をどう整理するか、というようなところ。
これらは行動データを比較的限定して取りやすいので、発展の可能性は十分にある。
atama+社がそのような取り組みをしている。
以前書いた通り、このやり方だと5つの懸念点があるが、前に進むことは間違いない。
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一方の学習時間を増やす、についてはどうか。
これはつまり学習時間をいかにとってもらうか、やる気、モチベーションの問題だ。
例えば、英語コーチングなどでもタイムマネジメントをサポートしたり、時間が取れなかった原因をコンサルタントと話して自覚する、などの方法で一定の成果を上げているようだ。
手前味噌だが、私が提供しているオンライン中国語コーチングでは、次のようなサポートをしている。短期集中期間は勉強にコミットする覚悟を決める、迷わず学習できるようにタスクという単位で学習を進める、毎回のタスクで成長実感を味わえるようにする、等。
人間の心についての研究は多くなされているが、複雑系(変数が多すぎ)すぎて規則を一般化できていないのが現状であろう。
必要な行動データを限定しきれないから、AIは分析できず最適解を出せない。
この分野でブレークスルーがありうるとすれば、冒頭で述べた通訳AIができることに、AIがより世界をさまざまな概念で分析できるようになってからだと思われる。
また、そもそも、この学習時間というのも、上述の学習効率とも相互に影響しているので切り離して考えるのは無理があるかもしれない。学習効率が上がって成果が出れば、やる気になって学習時間を増やすだろうし逆もしかりだから。
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ということで、まとめると、完璧な通訳AIは時間がかかるが実現の可能性がある。
ただ、出てきたとしても語学の意義は失われないので、語学サポートは残る。
そして、そのサポートは、学習効率の向上と学習時間の確保を目的とする。前者は行動データを比較的取りやすいために一定の成果を上げるだろうが、後者は、必要なデータの種類が多くなりすぎて技術的なブレークスルーがないと先に進みづらい。
だいぶざっくりの方向性だが、語学業界で活動するものとして大枠は押さえていき、自分にできることをやっていきたい。
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