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宗教と科学の融合か?田坂広志『死は存在しない』のゼロポイントフィールド

田坂広志『死は存在しない~最先端量子科学が示す新たな仮説~』を読んだ。


ここ数年読んだ本の中では、最ものめり込んで一気に読んでしまった。

難しい内容だが、いろいろシンプルに説明されており、余白も多いので、非常に読みやすい。(その分、なぜ?と思うところも多いが)

本書の内容は私が、30歳で哲学修士に入る前に考えていたことであった。

つまり、この世界をなにかしらの方法でうまく説明するというチャレンジ。(その後、私は、そもそもうまく説明できる、とか真理とは何かをまず確定させるべく、哲学に入っていった)

田坂氏は、原子力の博士であるが、本書では科学的な視点を持ちながら、この世界の不思議を1つの仮説で説明しようとしている。宗教のように、誰も確かめられない物語で世界説明をするのではなく、一定の科学的根拠を持ち、全世界を捉えるという営みは目からウロコだった。

世界はある意味、素粒子レベルでみたら、何の秩序もない波動だけの世界。
言ってみれば、下のような砂嵐のような、延々とよくわからないものが宇宙全体に広がっている。人間のスケールまでいくと、人とか動物とか、そういう認識できる単位になるが。

わた

  • 「量子真空」から無限大のエネルギーが放出され(ビッグバン)、138億年かけてこの宇宙ができた。

  • 我々の生きているこの世界の「背後」に、「量子真空」と呼ばれる、無限のエネルギーに満ちた世界が存在している。

というのは、一般的にも事実として認識されている。
それを踏まえて、田坂氏の仮説は、

「量子真空」の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場があり、この場に、この宇宙のすべての出来事のすべての情報が、「波動情報」として「ホログラム原理」で「記録」されている

というもの。


このように、「量子脳理論」の仮説や「量子生物学」の今後の発展を考えるならば、いずれ、我々の「脳」が、さらには、我々の「身体」が、量子的プロセスで「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がっているという仮説は、十分、科学的検討に値するものであろう。

と田坂氏は述べる。

そして、我々の「意識の場」である「脳や身体」が「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がっているとすれば、様々なスピリチュアル現象の説明がつく。例えば「直観」「以心伝心」「予感」「予知」「占い的中」「シンクロニシティ」「コンステレーション」など。

我々の多くが体験する、これらの「意識の不思議な現象」は、我々の「意識」が、この「ゼロ・ポイント・フィールド」と繋がることを通じて、必要な情報や知識や叡智を引き寄せることによって起こり、また、この「ゼロ・ポイント・フィールド」を介して、互いの「意識」が結びつくことによって起こる現象であると考えられる。という。

真理は、主に「一致説」と「整合説」で測られるが、たしかにこの仮説は、さまざまな不思議な現象を整合的に説明できている点で、真理に近いかもしれない。

ただ、自分自身がビッグバンとか量子真空とかの概念に疎いので、あまりしっかり吟味できておらず受け身の理解。

2つ考えたいことができたのでメモしておく。

疑問1:宇宙意識とはなにか?


宇宙意識っていつも疑問におもって流してきた。スピノザとか、ヘーゲルにもこのような概念があるが、かなり雑な感じがする。

人間という個体に意識が宿るように、地球とか宇宙にも意識がある、みたいなことは、なんとなくアナロジーでわかるが、実際にどういうことなのか?そこを踏み込んで説明してほしい。

疑問2:記録ってそもそも何か?

ビッグバンから今までの全データがゼロポイントフィールドに記録、記憶されているらしい。
田坂氏は、これがデジタルデータなら信ぴょう性ないが、波動、ホログラム形式として残っているというのが重要らしい。
一般的に言う記録とは、何らかの観測者、認識者の視点で、その認識装置が取れるデータの種類の形式で、何かを切り取ること。例えば、写真で記録する場合、

記録の本質とは何か?

それは、誰かが過去におきた出来事を何かしらのセンスデータで再体験したいときに、それが可能となるようなもの。監視カメラの映像は、視覚的な情報を固定したもの。
つまり、オンデマンドで、過去の情報が引き出せること。

ゼロポイントフィールドは、過去がそのまま残っている。つまり、あるセンスデータに限らず、ある意味カント的な「物自体」が残っているという発想だ。

でも、それならあえて、ゼロポイントフィールドに残っているといわなくても、現実世界でもある意味残っているといえるのではないか。
なぜなら、この世界自体はずっと残っており、ビッグバンからの素粒子レベルの全ては動いてはいるものの、世界のどこかを流動しているから。
現状とエネルギーの動きが把握できれば、ビリヤードの玉の動きが完全予測できるということと同じだ。

故人の身体も、灰になり空や海に散らばったとしても、どこかを漂っているはず。それでも、本書の仮説と同様のレベルで「直観」「以心伝心」「予感」「予知」「占い的中」「シンクロニシティ」「コンステレーション」を説明できるのではないか。



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