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【#仕事について話そう】What do you do?

私は漁師だ。
時にはサトウキビ畑の世話もするし、短期バイトを探すこともある。そちらの収入の方が多い月もある。
そもそも夫とともに漁をしているので、私一人の漁での収入がいくらなのかわからない。たぶん、平均で夫の半分か、願わくば2/3くらいにはなるかな~と思う。
でも、私の中では「私は漁師だ」と思っているし、それは私にとってとても重要なことだ。

昔、英会話を習っていたころだったか、人に職業を聞くときは
「What do you do?」
と言うということを知った。
「What is your job?」じゃないの?!workでもない…
「What do you do?」 あなたは何をしますか? みたいな。
それって…あなた自身、あなたそのものがいったい何者なのか聞いているようなもんじゃん!
あやうく
I read the book.
I watch TV.
とか答えてしまうところだったな~

当時の私にとってこれはすごく衝撃だったようで、おかしいくらいにはっきりと覚えている。

結婚することになってこの島に来て、子供を産んで、保育園に預けてアルバイトを始めた。
旅行会社の事務で、面白い仕事だったし、社長と私だけで人間関係も良好、お給料は多くはないけど時給額はいたって普通。
何も問題なく、気が付くと数年たち、赤ちゃんだった娘は、保育園で将来の夢などをお絵描きするような年齢になっていた。

将来の夢。
…私は?
…私の将来は?

この時、「What do you do?」が唐突によみがえった。
今の私は、何と答えるのだろう。
事務のバイトです、ってなんて言うんだろう。

その時気づいてしまった。
あれ??
大人になってから、こんなに長い間海から離れていたことはなかった。
というか、いつだって海の仕事をしてきた。
薄給だったけど、海ではプロフェッショナルとして働いてきた。
私はこのままでいいのだろうか。
いや、ダメダメ!
妊娠してからずっと離れていたけど、もう海に戻ろう!

その時ちょうど、夫は前職の土木アルバイトから漁師に戻っていた。
そして彼は、もう、人が変わったように幸せそうだった。
毎日毎日海のこと、漁のことを楽しそうに話すのだ。
朝食時には今日はどこの漁場に行こうかなとか、夕食時には今日はこんなのがとれたとか、漁師仲間と飲みに行った帰りには海の話ですごい盛り上がったとか。

だから私は、
「私も漁をやりたい」
と言って、一緒に船に乗るようになった。
そして私も、毎日毎日海のこと、漁のことを楽しく話すようになった。

私は夫に比べて、ほかの島の漁師に比べて、漁が下手だと思う。
一人だったら漁だけで食べてはいけないだろう。
銛突きは一発で急所をしとめるなんてなかなかできないし、釣りは好きじゃないし、追い込みはゼエゼエ言いながら泳いでもイカにからかわれたりする。
でもやっぱり海が好きだし、漁師になれてうれしい。
それなりにいろいろとれるし、夫にとっては一番役に立つ漁の相棒だと思う。
海にかかわる仕事をしてきたが、その中でも漁師は一番楽しい。

ああどうか、いつまでも海での仕事ができますように。
できるだけ長く、
私は漁師だ。
I fish.
と言える日が続きますように。


※先日通った英語の語学学校の先生によると、「What is your job?」でもOKだけど、多くの場合「What do you do?」と聞かれたら職業をこたえるものだそうです。

#仕事について話そう

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