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“国家の枠組みなしに生き残った民族、だからこそ国を守る強い意志”note106「物語 ウクライナの歴史」黒川祐次著

第三次世界大戦の危機とも言われるロシアのウクライナ侵攻に接して、自分に何ができるのか考える時、まず思ったのはウクライナに関して、何も知らない自分ということ。そこでググってみたら、駐ウクライナ大使が書いた「物語 ウクライナの歴史」という本を薦められた。一気に読んだ!

人類の長い歴史の中で、地域は古くから存在するのに、「国がない」民族として歴史を紡いできたのがウクライナで、1991年にようやく独立を果たしたが、31年目の今年、またしても他国から侵攻を受けている、それがウクライナであり、「国がない」というハンデを持ちながらも、ウクライナというアイデンティティを失う事はなかったということに、衝撃を受ける。

実は、9世紀から13世紀にかけて、「キエフ・ルーシ公国」という中世ヨーロッパに燦然と輝く大国があった。キエフ(現在のウクライナの首都:キーウ)を都とするルーシ」という意味で、ルーシが派生してロシアという言葉になったということ。つまり、ウクライナには独立した国がかつてあったと言えるのであるが、その後、キエフ・ルーシ公国の制度と文化を継承し、ロシア帝国に発展したということで、ロシアが正当な継承国家と称したため、ウクライナは「国がない」民族と言われている、ということらしい。

あのコサックダンスで有名な「コサック」はウクライナ発祥であるという事実も始めて知った。コサックは、ウクライナや南ロシアに住みついた者たちが、作った自治的な武装集団である。このコサックの精神が、今のロシア侵攻に果敢に対抗するウクライナの戦いに繋がっているのかもしれない。

文化芸術面でのウクライナも驚かされる。作家として、ウクライナ人のゴーゴリ、ロシア人のトルストイ、ユダヤ人で「屋根の上のヴァイオリン弾き」の原作者アレイヘムが、ポーランド人のコンラッドがいる。「屋根の上のヴァイオリン弾き」の話は我々日本人にもなじみ深いですね。

音楽家では、ピアニストのホロヴィッツ、舞踏家:ニジンスキー、科学者:ビッグバン理論のガモフがいる。もっとたくさん紹介されていたが、私が名前を知っている人は、これ位でした。(あとは本で確認ください)


ウクライナはずっと地域としてのアイデンティティを忘れず、独立を願い、運動を繰り広げてきたが、なかなか叶えられることができないできた、その理由は、ウクライナという土地が持つ重要性にあると黒川氏は言っている。
特にロシアは、ウクライナの面積・人口の面からも、工業・農業の面からもそれなしではやっていけない不可欠の一部として考えており、いかなる犠牲を払ってもウクライナをロシアの枠内にとどめておきたいと考えているということらしい。

まさに、今回の侵攻に、ロシア(プーチンか)のそのような意図が感じられる。この本は2002年発行なので、その後のウクライナの2014年マイダン革命については触れられていないが、革命によって大きく民主化、西寄りに動いたウクライナに対して、上記の思いを強くしたプーチンが動いてしまったということか?

地続きで他国と接するという国間の関係性をあまり実感できないなと、歴史や背景を知る事で、分かる事もたくさんあると思う。支援の第一歩は“知る”ことである、と改めて感じた本であった。

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