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ぼくと彼女とコーヒーと。

心が穏やかでない日が長いこと続いていた。

雨に打たれながら、僕はクリーニング店に仕上がった洋服を運ぶ。
やみそうにない雨は懸命に働く僕を嘲笑うかのように、服や靴を濡らしていった。

洋服を運び終えて車へ戻る。車内は決して快適な空間とは言えず、湿気に熱気が加わって今すぐにでもシャワーを浴びたい気持ちだった。

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どうも、こんにちは。yasumaです。
今回は”僕にとって大切なこと”を記していきたいと思います。

数年前、僕はクリーニング店で働いていた時期がありました。
そこで出会ったのが現在も一緒に住んでいる彼女です。

まぁ今は色々とあって別れてしまったのですが、お互いに割り切ってルームシェアをしています。

そんな彼女の笑顔がぼくにとってはとても大切。
(別れているくせにとか意見はあるかもですが、別れているからと言ってその人のことが大切じゃないとか逆に不思議です。なんの契約?)

彼女はコーヒーによって、悩まされてきた時期があります。
そんな彼女の笑顔もまたコーヒーによって生まれる時があるのでなんとも言えないのですけどね。

今回は”僕にとって大切なこと”彼女の笑顔について、少しだけお話をしていきます。

*クリーニング

彼女はクリーニング店の工場直営店で働いていた。
歳上でとても優しくて魅力的な美人さん。こんな素敵な人と付き合えるなんて当時は考えたこともなかった。

タイミングが良かったのか運命の悪戯なのか、僕からデートに誘って映画を見に行き、あっという間に付き合って、数日後にはベットの上にいた。

初めてのデートは雨の日だった。
今でも忘れない。

「ミスペレグリンと奇妙な子供たち」を見終わった直後、後半があまりにも微妙な映画だったため、感想をどう伝えるか頭をフル回転させながら考え、正直に「微妙だったね」と伝えると彼女も笑いながら「ちょっとね~、最初はすごくよかったのに」と盛り上がった。

ペレグリン、ありがとう。

映画スクリーンの横で彼女から手をつないでくれて、少し恥ずかしかったけど、久しぶりにドキドキしたのを覚えている。

勤務先の人たちには当分の間は内緒にしておこう。とお互いで話し合った結果決まった。

彼女はコーヒーが好きらしく、働きながらも合間を見ては水筒に入れてきているコーヒーをがぶがぶ飲んでいた。

僕がいままで見たこともないくらいの勢いで本当にがぶがぶと。
「ふ~っ」と水筒から口を離す彼女の顔が面白かった。

*お花見

春が来て、僕たちは初めて2人でお花見に出かけた。
桜が満開でとても綺麗だった。人混みが苦手なぼくは少しだけ無理をして、2人で屋台を見て回る。

彼女もそんなに人混みは得意じゃないと言っていたけれど、せっかくだから見てみようと一番人の多い屋台の通りに入っていったのだ。

彼女がやけに近く、ぎゅっと腕を組んでくるので胸があたる。
(おいおい、まだ昼間だぜ)と内心興奮している自分を必死で抑えていた時だった。

彼女の呼吸が荒くなる。

「どうしたの、大丈夫?」

ぜぇっ、ぜぇーと息を切らしながら、必死で呼吸をしようと彼女は頑張っていた。

慌てて人混みを抜けた。彼女は正直歩いているとは言えない状態だった。僕にもたれながら必死でしがみついていたのだ。
1分前の馬鹿な自分に早く気づけと言ってやりたくなる。

簡易トイレ近くまで行くと「トイレに行ってくる」と意識が朦朧としているのか、彼女はぽつりと言った。

「大丈夫?!いける??」

うん、とだけ言い彼女はトイレに入っていく。

10分以上は待っただろうか。全然出てこないのでそろそろ心配になってきたぞ、と安否を確認しようとトイレの前に行こうとしたその時、彼女は出てきた。

大丈夫そうか聞くと「ごめんね、もう大丈夫」と言う。
けれど、今日はもう花見はやめておこう。という話になった。

車に乗り込み、2人で夕食を食べて帰宅する予定だったけど、今日はもうやめておこうかという話をしている最中だった。彼女の呼吸がまた荒くなり、ぜぇぜぇと言い出した。

「ちょっと、病院いこう!!」車のシートベルトを彼女に装着させ病院へ向かおうとすると彼女が息切れぎれに「まって」と言う。大丈夫だから、と。

僕にはまったく大丈夫に見えなかったが、少しだけ待ってみることにした。

抱きしめながら子供をあやすように背中を叩き、しばらく様子を見る。

数分後、彼女は落ち着きを取り戻した。

顔は涙でぐしょぐしょ、ごめんねという彼女、ただ事ではないと思ったので何度か本当に大丈夫かと問うと彼女は言った。

「パニック障害って知ってる?私、それなんだ」と。

それから、以前にも友達の前で発作が起きてしまい救急車を呼ばれそうになったこと、発作は数分~長くても十数で治まること、最後に「今まで話していなくてごめん、こんなの嫌だよね」と言われた。

正直ぼくは、パニック障害だから嫌とか隠していたとか本当に気にならなかったので「おれは全然大丈夫だけど、病院行かなくて大丈夫なの?」と聞いた。

「病院は大丈夫。今までも何度か行ったけど、行って良くなるものではなかったし」と彼女。

そこから色々と話をする。

僕は彼女の発作を思い出した。車内でぜぇぜぇと言い出した時には、呼吸が荒すぎて何かの冗談かと思ったのは事実だ。

あと、呼吸が少しエロかったので(あっ、はじまる感じのやつ?え、車だよ、うふぁW)ってなってたのは逆に隠しておいた僕。あほだな。今思うと。すぐに病院だ!ってなれてまだ良かったけど。人として、ね。

ここ数年は治まっていたのが今日、突然きたといっていた。
自分でも治ったものだと思っていたから、かなりびっくりしたらしい。

その日はそのままお家に送り届けて解散した。

職場で会っては彼女がコーヒーをがぶがぶ飲むのを見届け、何度もデートをして、少しづつ色んな彼女を知る。何度も発作に見舞われる彼女を抱きしめて、食事をし、ベットに行き、肌を重ねる。

いつだろうか。ふと、気づいた。

「ねぇ、コーヒーのせいじゃない?」

突然ぼくが放った言葉に彼女は最初「え?」と言った。

「発作、コーヒーの飲みすぎが原因なんじゃない?」

「えー?そんなことあるかな。」

「でもさ、仕事中もだけどデート中もコーヒーがぶがぶ飲むじゃん?」

「コーヒー好きだからなー、わたし」

それにしてもの話をしているわけですよ。と僕は言う。

ここで、僕は初めてパニック障害について真剣に調べまくった。
これまでは彼女のその”障害”と呼ばれるものがどんな症状で精神的なものではないことくらいしか知らなかった。

*パニック障害

パニック障害とは、精神的なものではなく”脳”の機能障害によるものだ。詳しく知りたい人はあとでがっつり調べてみてほしい。

簡潔に言うとセロトニンが少なかったり、受容体が鈍くなっていたりする。他にも原因は様々なものが考えられ、単に脳の機能障害で一括りにはできないと個人的には考えている。環境、人、性格、思考、生活習慣などなど様々なものが組み合わさっているのではないか?とおもいます。

誰しもが発症する可能性のあるものです。でも、決して治らないものではありません。

パニック障害について真剣に調べると色々と分かってきた。が、まだまだ解明されていない部分も多く、これをすれば必ず治る!というものは当時見つからなかった。

けれど、アメリカでは治るものとして扱われている記事を見つけた。そこからガツガツ検索しまくって、情報が信用できるのかできないのか調べ判断しながら進んでいくと、カフェインを控えると比較的症状が良くなるということを知った。そしてそれは信用できたし、結果として彼女を笑顔にしている。なによりカフェインを控えるだけでいいのだから、お金もかからず試してみるに越したことはなかった。

その他にも甲殻類に含まれる”キトサン”が良いとか、鉄分が足りてないとか色々ありましたがここで書くと脱線するので以下略。またどこかで。

そこから徹底的にノンカフェを実行してもらい、ノンカフェのコーヒーを彼女に届け(ノンカフェは何故か高い、たぶん工程?)、デート中にカフェインの入っていそうなものを彼女が頼もうとすると即却下。

「わたし何飲めばいいのー?」とちょい怒でしたが気にしません。笑

紅茶、却下。
緑茶、却下。
アルコール、却下。(そもそも彼女はお酒飲みませんでしたが、僕が飲んでいると美味しそー。と言っていたため)
カフェラテ、ばかたれ。

そんなこんなで月日は流れ、色んな事情で僕たちは別れます。

そしてあんなこんなで現在一緒に住んでいます。
付き合ってはいないですが、彼女は僕にとってとても大切な存在です。

今朝、彼女にコーヒーを淹れました。カフェイン有り、豆からドリップして、ミルクを少し。

彼女が笑顔になることが僕にとってとても大切なことです。この幸せが、いつまでも続きますように。


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