とあるゲイの思春期 - [8] 最後に(カミングアウトについて失敗から学んだ事)
前回、カミングアウトについての失敗談を書きました。
とあるゲイの思春期[1]~[7]を、もし全て読んで下った方がいたら、ありがとうございます。
そして、最後まで読んで下さったのにバッドエンドで申し訳ないです…。
カミングアウトの失敗例はなかなか目にする機会がないように思い書きました。
そこから学ぶべき点が幾つかあったように思います。
今回はカミングアウトを考えている人、今後するかどうか迷っている人に参考にしてもらえるよう、僕が思う“カミングアウトについての注意点”をいくつか挙げたいと思います。
①カミングアウトをする事が素晴らしいとは限らない
以前から『カミングアウトは素晴らしい』という風潮がLGBT全体に何となくあるような気がします。
確かにカミングアウトをする事で、当事者でない方に“近しい人にLGBTの当事者がいる”と感じてもらい、様々な問題をにより身近に感じてもらえるきっかけになるかも知れません。
しかし、生活や価値観、環境などは人によって様々です。
無理にカミングアウトをする事はないし、人によっては「カミングアウトは絶対しない」と心に決めている人もいるでしょう。
それは悪い事ではないし、その人がたまたまそういう決断をしたと言うだけに過ぎません。
オープンにしている同性愛者が素晴らしくて、そうでない同性愛者がけしからんというわけではないと思います。
本来カミングアウトは、相手との関係性をより深めるためのものです。
そして現在の日本社会で、同性愛者である事を関わる人すべてにオープンにしている人は、他人から同性愛者である事について、批判や中傷をされても構わないと覚悟を決めている強者か、直接被害を被りにくい特別な環境や立場にある人のように思います。
多くの場合、カミングアウトにはリスクが伴います。
アウティング(本人の承諾なしに第三者にセクシュアリティ等を暴露する事)の可能性もありますし、その事を理由に命を絶つ人もいます。
カミングアウトをしない事で嘘をつかなければいけない場面もあるかも知れませんが、その嘘は決して悪い嘘ではありません。自分を守るための必要な嘘です。
カミングアウトをする場合、それがプラスに働くか?マイナスに働くか?よく考え、慎重に決断をする必要があります。
もしカミングアウトをした場合の影響がはっきりとせず、不安がある人については、今はまだカミングアウトを行うタイミングではないように僕は思います。
②なぜカミングアウトをするのか?
なぜカミングアウトを行うのか、その理由を考えてみましょう。
“親しい人とより関係性を深めたい”でも構わないですし、その他の理由でも構いません。
僕の友人に、転職などで仕事の面接を受ける際は、決まって自身がゲイであり、パートナーがいる事をカミングアウトする人がいます。
彼は“パートナーとの時間なども大切にしたい”と考え、カミングアウトにする事に決めているそうです。
もしそれを理由に採用が見送られる事になったとしても仕方がないし、そのような職場で働きたくないと割り切っています。
それぐらいカミングアウトを行う上での理由や覚悟があるのであれば、この点については問題ないでしょう。
たまに親から「結婚はまだか?孫の顔が見たい」等としつこくとがめられ、売り言葉に買い言葉のような形で「俺はゲイだから諦めてくれ」と感情的にカミングアウトをした例を耳にします。
これではカミングアウトした方、された方、双方に必ずわだかまりが残る形となります。
決して感情的・衝動的にではなく、その人になぜカミングアウトをしたいのか?じっくりと考えてから、カミングアウトを行うか検討を行うべきでしょう。
③事前に相手の認識度を確認しよう
この国には、LGBTを正しく理解できていない人が、年配層を中心に沢山います。
昨今は、テレビなどメディアでLGBTについて取り上げられる事が多くなりました。
相手が家族等であれば、一緒にテレビを見ている時に、番組でLGBTについて報道や情報に触れる機会があるかも知れません。
その際の相手の表情や言動をよく観察した上で、LGBTについてどのような印象を持っているか、聞いてみてもいいかも知れません。
④相手と自分の関係性や立場を考えよう
前にも触れましたが、カミングアウトを行う上で相手にとって自分がどのような立場であるか、よく考えましょう。
今後の関係性に万が一、わだかまりが残ってしまったとして、相手との距離感や関係性などによっては、カミングアウトをした方、された方、両方がつらい状態になるでしょう。
相手が家族であれば、現在同居をしているのか?等も考慮に入れておく必要があるかも知れません。
また相手が学校や職場など、同じ組織に所属する相手なのであれば、相手との利害関係も考慮する点になるかと思います。
相手が上司や先輩なのであれば、今後職場などで不利益を被る事も有り得るかも知れません。
相手がLGBTを正しく理解しているか分からず、家族などとても近い距離感にいる人物、または何らかの利害関係のある人物である場合、カミングアウトは極めて慎重に行うべきと考えます。
⑤LGBTについて正しい知識はあるか?
とくに年配の方を中心にLGBTについて、正しい知識を持ち合わせていない人も多くいます。
事前に正しい知識をある程度身に着け、相手から質問があった際、正しく自分の状態を伝えれるようにしておきましょう。
例えば、ゲイの僕がカミングアウトをするとして
「普段、女装して過ごしているの?」や「女になりたいの?」
などと間違って認識される可能性があります。
別に僕自身、MtF(男性に生まれたが心は女性)の方と混同されても嫌ではないですが、それを前提に僕との接し方などを配慮されると、複雑な心境になるでしょうし、場合によってはストレスに感じるかも知れません。
このような事がないよう、きちんと自分のセクシュアリティを説明できる準備をしておきましょう。
例えば僕の場合…
男性に生まれたので身体の性は「男性」
心も男性なので性自認も「男性」
好きになる相手の性は男性なので性的指向が「男性」
という形で、身体の性、心の性、性的指向を分けて説明すると分かりやすいかも知れません。
人によっては、僕と同じようにゲイなのに、女装をする人、例えば“マツコ・デラックスさん”のような方はあなたと違うの?と聞いてくる人もいるかも知れません。
僕の場合、男性の服装しかしませんので、マツコ・デラックスさんとは少し違う部分があります。
マツコ・デラックスさんのような方の場合、性表現の一部が女性的なのでしょう。
マツコ・デラックスさんやミッツ・マングローブさんのような方の事を“クロスドレッサー(トランスヴェスタイト)”とも言う場合があるようです。
少し複雑になりますが、クロスドレッサーの人も含めて、相手に説明をする必要がある場合、身体の性、心の性、性的指向に加えて、性表現というカテゴリも併せて説明をする事である程度誤解を防ぐ事ができるかと思います。
今までLGBTに関しての情報に一切触れていない人たちに、きちんと説明をするのは、それなりの時間を要します。
カミングアウトを受ける立場の人にしてみたら、複雑で腑に落ちない点も多くあるかと思います。
⑥時間を掛けて理解をしてもらおう
前に⑤で書いたように、LGBTに関する情報に全く触れていなかった人に理解を求める場合、かなりの時間が掛かるでしょう。
当事者である僕の場合、LGBTならある程度、説明はできます。
Lはレズビアン(女性の同性愛者)
Gはゲイ(男性の同性愛者)
Bはバイセクシュアル(男女どちらも好きになる事がある人)
Tはトランスジェンダー(身体の性と心の性が違う人)
しかし、最近はLGBTからさらに他のセクシュアリティも含めて、LGBTQ+という表現も使われるようになりました。
Qは、クィアやクエスチョニングという意味で、性自認や性的指向が定まらない人の事…だったかと思います。
+に至っては、勉強不足で大変恐縮なのですが、何となくしか理解できていません…。
当事者であると公表している人と関わった事がないのもあってか、前に一度調べましたが、どこまで正しく理解できているか自信が持てません。
当事者ですら、LGBTQ+を理解するのに時間が掛かるのと同じで、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)とある種、接点がなかった人たちにとっては、カミングアウトを受けたとしても、何が何だかさっぱり理解できないこともあるやも知れません。
でももし相手が、家族などあなたにとって大切な人で、相手もあなたの事を同じように大切な人と感じているのであれば、時間は沢山必要かも知れませんが、いずれ正しく理解をしてくれる日が来るかも知れません。
⑦最後に
僕が思う、カミングアウトについて、気を付けるべき点はこのような感じでしょうか?
ちなみに、今話題のChatGPTに“ゲイがカミングアウトする上での留意点は?”と聞いてみました。
回答は以下のとおりでした。
結構僕の思っている内容に近いものが返ってきました 笑。
ちなみに僕が最近体験したカミングアウト体験談ですが、それはまた別の機会に書きたいと思います。
ありがとうございました。
終
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