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食料廃棄物のEC?循環型経済の動きとデザインの役割

世界三大水メジャーの仏ヴェオリアの英国法人が、食料廃棄物などを含むオーガニック資源のEコマース「BioTrading」の開設を発表。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)促進の実験的な意味合いも強いとは思うが、おそらくこの領域では初のデジタルマーケットプレイス。

ヴェオリアのリリースによれば、扱われる商品は、食料廃棄物、有機性の産業廃棄物、農業廃棄物、バイオディーゼルやバイオエタノール残渣、下水・産業汚泥、木材等とのこと。誰でも購入が可能だが、想定される買い手として、農業、水処理、建設、食品、バイオディーゼル、バイオエタノール業界等などが記載されている。

水メジャーというとあまり良い印象を持たない人も多いと思うが、ヨーロッパでのサーキュラーエコノミーの動きと合わせて取り組み自体には注目したい。

https://www.letsrecycle.com/news/latest-news/trading-platform-organics-veolia/

◯ヨーロッパを中心に広がるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の動き

こうした環境や文化と結びついた動きが先に起こっていくのはやはりヨーロッパ。

EUで2015年にサステナビリティ戦略として「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」が採択され、

オランダやイギリスをはじめ循環型経済システムへと移行の動きが各国で見られている。

CEO guide to the circular economyより

一方では、今回の"BioTrading"のようなプラットフォーム型事業はあまり出ていなかった印象。

だからこそ、Veolia UKのOrganics and Technology DirectorであるRaquel Carrasco氏はこの取り組みを

「オーガニック資源活用のMissing Link(系を完成するためにかけているピース)」

という表現しているのだろうし、

産業側からバリューチェーンを通じた資源の循環型利活用モデルへ移行するための一つの実験なのだろうと思う。

ちなみに、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済会議)の「循環型経済のためのCEOガイド」には、

Digital, Physical, Biological Techという3つのテクノロジードライバーに加え、

・Circular Supplies:再生可能エネルギーやバイオなどリサイクル可能な資源投入

・Resource Recovery:廃棄物や副次生産物から利用可能な資源の回収とリサイクル

・Product Life-Extension:新たなプロダクトデザインや修復・再販を通じたプロダクトライフサイクルの延長

・Sharing Platform:資源の共有・利活用・オーナーシップづくりのためのプラットフォーム

・Product as a service:サービス型モデルを通じた企業主導での資源循環・プロダクトライフサイクルのデザイン

という、循環型のバリューチェーンを支える上で鍵となる5つのビジネスモデルが紹介されている。

私もあるプロジェクトで循環型のエコシステムを可視化に取り組んだことがあるが、この、

バリューチェーンを直線ではなく、循環(円やクローズドシステム)で描いてみる、というシンプルな行為そのものがアイオープニングな気づきをたくさんくれる

これからの時代どの業界も避けて通れないテーマだと思うのでぜひやってみてほしい。

(なお、英国NPOとユニリーバが共同開発した”Circular Business Model Toolkit“には、クローズド・ループ・リサイクリングやローカル・ループなどもう少し具体的な10個のモデルが紹介されている)

CEO guide to the circular economyより

◯循環型経済と広義のデザイン

また、こうした動きの中で興味深いのが、サーキュラーデザイン(循環型デザイン)の流れ。

循環型経済は、最終製品の設計と直接的に関わっているため、もともとプロダクト系のデザイナーが多く関わっていた領域だが、

英国のNPO Forum for the Futureが公開しているサーキュラー・デザインを学ぶためのツール”Design For Demand”などを見ていると、

デザイン戦略の重要な役割として、Openness、Storytelling、Serviceの3つが定義されていたり、

「材料のバイオ科学から製造工程、人々の消費行動までを、従来のように線型ではなく循環型で考えていく必要があり、複雑性の高いエコシステムを見える化し、扱わなくてはならない」といったような文脈でデザインの重要性が示唆されていたり、

プロダクトデザインのレイヤーに留まらない、広義の意味でのデザインの活用が促進されている印象を受ける。

日本にはいかんせん米国主導のものが注目されやすいが、共生的な思想や文化などこうしたヨーロッパの動きの方が本当は相性が良いのではないかとも思う。

Design For Demandより

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