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「葬送のフリーレン」は終活に関心が無い人にこそ読んで欲しい漫画

終活に関心の薄い人はたくさんいると思います。
私も最近まで終活にはあまり興味がありませんでした。

「葬送のフリーレン」も、人から勧められて漫画で読んだことはあったのですが、正直「良い話だけどバトルシーンが少ないやや地味な王道ファンタジー漫画」という感想でした。

しかし去年、脳出血で死ぬ目にあったことがきっかけで終活に関心を持つようになり、その後、改めてアニメで見た時は最初とはまったく違う感想を抱きました。

これは勇者達の素敵な終活ストーリー
フリーレンは終活に関心の無かった「かつての自分」なのだと。

第1話「冒険の終わり」

「魔王を倒した後」は、人生100年時代のシニアライフ

物語は冒頭から魔王を倒した後の勇者達から始まります。
勇者ヒンメルはフリーレンに魔王を倒した後の人生について話します。

出典「葬送のフリーレン」vol.1

魔王討伐ほどの偉業ではないにしろ、働き続けてきた会社を定年退職するなど、私達にも人生に一区切りがつくタイミングはやってきます。
ただ、60代でその区切りが来たとしても、人生100年時代においてその先の人生はまだまだ長い。

ところで終活といえば「死ぬ時のこと」と考えがちですが、それは違います。シニアライフをどう生きていくか?がメインテーマなのです。
死というのはどう生きていくのかを考える上で対になるテーマだから必要なのであって死がメインテーマではないのです。

ヒンメルのすごいところは、魔王討伐という偉業を達成したにもかかわらず、現役引退後の人生をどう生きるか?に意識が向いているというところです。終活意識が高いですね。
ヒンメルは見た感じまだ20代の若者。
中々できることじゃないです。
フリーレンの関心薄めの反応の方がむしろ普通かも。

出典「葬送のフリーレン」vol.1


1000年以上も生きるエルフ族にとって、自分の人生の後半ましてやエンディングを意識するなんてことは無いのでしょう。
100年程度しか生きない私達でさえ難しいのですから。

出典「葬送のフリーレン」vol.1

積み重ねた思い出こそが大事な財産

その後50年が経ち、フリーレンはかつての仲間達と再会します。
人間族のヒンメルとハイターはすっかり老人になっていました。

ただ、何十年過ぎても、彼らは一緒に冒険をして魔王を倒すという濃密な体験を共有した「かけがえのない仲間」でした。ヒンメルは最後の言葉としてフリーレンに感謝の気持ちを伝えます。

出典「葬送のフリーレン」vol.1

きっとこの時にはもう、自分が長くないことを悟っていたのでしょう。
ヒンメルの言葉は、富や名声よりも、愛する人達と積み重ねた思い出こそが、大事な財産なのだと教えてくれます。

その気持ちはフリーレンにどれくらい伝わったのでしょうか…

仲間との永遠の別れとフリーレンの心境変化

そして、ヒンメルは永遠の眠りにつきます。

出典「葬送のフリーレン」vol.1

「他人の死」や「知り合いの死」ではなく、「苦楽を共にしたかけがえのない仲間の死」という経験はフリーレンにとって初めてのことだったのかも知れません。

失って初めて、「生きている内に彼のことをもっと知っておくべきだった」という後悔の念が生まれます。

出典「葬送のフリーレン」vol.1


出典「葬送のフリーレン」vol.1

そして人間を知る旅へ


そして、他人はもちろん自分の人生にさえ関心の薄かったフリーレンが、人間に関心を持つようになります。

別れ際に「これが最後になる」というハイターにフリーレンは「死は怖くないのかと」尋ねます。

出典「葬送のフリーレン」vol.1
出典「葬送のフリーレン」vol.1

ハイターの答えには彼らしいポジティブで楽観的な死生観が表れていました。こんな死生観を持てたら終活も楽しくできますね。

「ポジティブな死生観を持つ」ということは、終活にとって本当に大事なことだと思います。

そして、仲間や自分の人生に無関心だった以前のフリーレンからはこんな疑問はきっと出てこなかったでしょう。ヒンメルの死を通じて、人間を知る旅というフリーレンの終活もまた始まったのです。

出典「葬送のフリーレン」vol.1


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