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建築に込められた想い。時代をこえて受け止めたい

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建築には、それらを作った人の思いが詰まっている。そんな思いを感じることができればと、建築を見に足を運びます。
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#博多

木々の向こうのただならぬ気配

昨夏のある日の午後、博多の街を自転車で のんびりと走っていると、木々の向こうに ただならぬ気配を感じた。巨大な石の塊の ような建物は、最近の美術館建築にも見える。 その六角形の建物は、県庁の議会棟であった。 福岡県庁舎の議会棟 1981 黒川紀章 その姿を、悠々と水面に映していた面影は今はない。 干上がった池に建つ建物は、砂漠のピラミッドを彷彿 とさせる。ガラスに越しに庭園を眺めることができた レストランは、昨年3月末に閉店しひっそりしている。 六角形であることで、内か

一台の車のためにある空間

博多から北へ向かう3号線沿いにはアルファロメオ、 ボルボ、マクラーレンなどの自動車のショールーム が点在している。こちらはランボルギーニ福岡である。 鋭い走りを彷彿するようなエッジの利いた入り口。 軒裏の白いラインが、建物の形を際立たせている。 建物の柱や看板の側面と、展示された車の白色に より統一感のあるシャープな色調となっている。 ショールームに展示してあるのは一台であるが、 その圧倒的な存在感は、空間全体と呼応している。 躍動感あるデザインにより、その車は今にも

ありし日の姿に思いを寄せて

西日本シティ銀行本店  1971  磯崎新 (旧福岡相互銀行本店) 4月に福岡に引っ越してきて驚いたことは、 博多駅前の赤い銀行が解体中であったことだ。 今は解体も終わり、駅前にぽっかりと空間が生ま れている。その迫力ある姿は、今でも目に浮かぶ。 インド砂岩の赤茶色の壁の圧倒的な存在感、 奥の外壁面に不均一に施された白い水平ライン、 外壁に配置された多様な開口部のバランス感覚、 低層部の宇宙船的なデザインが持つ違和感、 建物の内外に散りばめらていたオブジェやアート。